Parger 75 修理シリーズ第二弾は、フラットトップのParker 75。よく初年度モデルと間違えて説明されていることがあるが、初年度モデルは首軸を銅軸にねじ込む部分が金属製。今回紹介するのは、そこが樹脂製なので初年度モデルではない。
胴体の純銀部分は疲れていないが首軸ユニットは相当疲弊している。カートリッジを長期間挿したまま放置し、書けなくなってから慌てて抜き、コンバーターを挿した状態で中古市場に流れたのであろう。このペン先根元のドロドロさ加減は【半一族】、特に西日本方面に生息する部族の琴線に触れるのでは・・・と想像する。ペン先鏡面をサンドペーパーで磨いて綺麗にしてあるのがお気に召さないかもしれないが。
首軸の金属部分の左側、ペン先の首軸と接する部分に茶色の滓のようなものが付着している。削って水に溶かすと黒いのだが、ブルーブラックが黒化したのか、ブラックインクの成分が変色したのかは不明。おそらくは前者ではないかなと想像している。昔の人はブルーブラックが大好きだったというのがその理由。この個体にはParker 75の典型的症状である首軸痩せが発生している。画像下部分がやや細くなっているのがわかるかな?
この症状を持つ個体は二束三文の値打ちになってしまう。eBayでは状態の良い首軸ユニットは往々にしてParker 75自体よりも高い値付けになっている。これは父親からプレゼントされた本体は生かしながら、首軸を交換して書けるようにしたい・・・という人が多いせいではないだろうか?
拙者の父もParker 75を使っていた。几帳面で神経質な人で、しょっちゅう萬年筆を洗浄していたため、最後まで首軸の劣化はなかった。1977年〜1997年くらいまで20年ほど使っていたはずじゃ。父親のParker 75もMだったが球状のまん丸いペンポイントが付いていた。しかるのこちらにはちゃんと成型されたペンポイントがついている。おそらくは後年のペン先がついていると思われる。さらに驚くべき事に、ペンポイントが誰かによって研がれている。
かなり上手な研ぎで、これ以上いじる必要性を感じない。引っ掛かりもなく、一般の人の書き癖に合わせてスイートスポットも形成されているが、チャーチャーと研ぐ機械が使われた形跡はない。また超音波洗浄機で洗浄された形跡もないという不思議なペン先。調整師ならプロ・アマを問わず、清掃くらいはするからなぁ・・・首軸先端部に【0】の刻印がある。このマークに惚れている人も多いので、中古市場では通常物よりは値が張るらしい。人のことは言えないが、ほんにコレクターってヘンな奴!【神は細部に宿る】のか?
そしてペン先ユニットであるが・・・驚くほど汚れていた。ドロドロというよりは、カサカサ!ペン先ユニットを抜こうとしてもビクともしない。左右に捻ろうとするとインク滓がカサカサと紙の上に舞い落ちる。それでもグイグイひっぱているとペン先ユニットがズリズリと出てきたのだが・・・