今回の生贄は現行のNo.149 18K-M。依頼人は18K-Bということで購入したらしい。おそらくはオークションであろう。ペン先が2段階に分けて研がれている。すなわちペンを立てて書くときの筆記角度と、寝かせて書くときの筆記角度の2箇所に研磨痕が見られる。この場合、その中間の筆記角度で書くと、カリカリとして非常に書きごこちが悪い。
どうやって研ぐかを会得する前の、微笑ましい時期の研ぎだが、そういう失敗作がオークションで処分されている現状は悲しい。もう一歩で良い調整方法を会得できるのに・・・と残念でならない。
新品以外をオークションで入手する場合は、その後で調整を受ける機会があるかどうかを冷静に判断してからポチっとやるようにな。ペン先は丸研ぎのM。どういう根拠でこれがBだと判断したのかは不明だが、国産のMと比べれば字幅は太いかもしれない。
もっともスリットが詰まっており、インクフローは少ない。ちゃんとインクの色目がわかるほどに薄い字となる。ただ、こういう調整状態こそが正しいという意見もある。ドバドバにするとインクの濃淡がわからないのでおもしろくないのだとか。
この話は韓国のPenHood会長のParker 51氏からもうかがったが、なるほどなぁ!と感心した記憶がある。書く行為を楽しむか、書かれた作品を楽しむかで違うが、書いている途中の気持ちよさはインクフローが良い方が上であろう。逆に書かれた文字の美しさは字の濃淡が楽しめるほうが味わい深い。依頼人は縦横同じ字幅で、ややStubっぽい書き味を求めているが、このペン先の研ぎを生かしたままそうするのは無理。素人研ぎでかなり斜めに腹をカットしているので、しゃきっとした字形にはならない。
ペンポイント先端部と腹を削って、一度Italic調のペンポイントに研ぎ、そこからStubを意識した縦横の字幅がほとんど同じに書けるように研いでいくしかあるまい。素人研ぎの弱点ははっきりとした方向性を持たず、いきあたりばったりでひたすら試行錯誤で研磨すること。それをやられるとペンポイントがメチャクチャになる。方向性を持って研いであれば、無駄な削りが無いので救える可能性が高まる。こちらがペン先とペン芯の全体像。コストカット穴のある現行品のペン先。No.149のペン先はいつ見ても美しい。首軸から中に入っている部分が長いので安定感も抜群!
コストカット穴が出来てから摩擦係数が小さくなり、Holdが弱くなるのでは?という懸念があったのだが、今回、その心配は無いという証拠を見つけた。
それは・・・