2012年02月27日

月曜日の調整報告 【 Montblanc No.149 現行品 18K-M ほんのりStub的・・・ 】

2012-02-27 01今回の生贄は現行のNo.149 18K-M。依頼人は18K-Bということで購入したらしい。おそらくはオークションであろう。ペン先が2段階に分けて研がれている。すなわちペンを立てて書くときの筆記角度と、寝かせて書くときの筆記角度の2箇所に研磨痕が見られる。この場合、その中間の筆記角度で書くと、カリカリとして非常に書きごこちが悪い。

どうやって研ぐかを会得する前の、微笑ましい時期の研ぎだが、そういう失敗作がオークションで処分されている現状は悲しい。もう一歩で良い調整方法を会得できるのに・・・と残念でならない。

新品以外をオークションで入手する場合は、その後で調整を受ける機会があるかどうかを冷静に判断してからポチっとやるようにな。

2012-02-27 022012-02-27 03ペン先は丸研ぎのM。どういう根拠でこれがBだと判断したのかは不明だが、国産のMと比べれば字幅は太いかもしれない。

もっともスリットが詰まっており、インクフローは少ない。ちゃんとインクの色目がわかるほどに薄い字となる。ただ、こういう調整状態こそが正しいという意見もある。ドバドバにするとインクの濃淡がわからないのでおもしろくないのだとか。

この話は韓国のPenHood会長のParker 51氏からもうかがったが、なるほどなぁ!と感心した記憶がある。書く行為を楽しむか、書かれた作品を楽しむかで違うが、書いている途中の気持ちよさはインクフローが良い方が上であろう。逆に書かれた文字の美しさは字の濃淡が楽しめるほうが味わい深い。

2012-02-27 042012-02-27 05依頼人は縦横同じ字幅で、ややStubっぽい書き味を求めているが、このペン先の研ぎを生かしたままそうするのは無理。素人研ぎでかなり斜めに腹をカットしているので、しゃきっとした字形にはならない。

ペンポイント先端部と腹を削って、一度Italic調のペンポイントに研ぎ、そこからStubを意識した縦横の字幅がほとんど同じに書けるように研いでいくしかあるまい。素人研ぎの弱点ははっきりとした方向性を持たず、いきあたりばったりでひたすら試行錯誤で研磨すること。それをやられるとペンポイントがメチャクチャになる。方向性を持って研いであれば、無駄な削りが無いので救える可能性が高まる。

2012-02-27 062012-02-27 07こちらがペン先とペン芯の全体像。コストカット穴のある現行品のペン先。No.149のペン先はいつ見ても美しい。首軸から中に入っている部分が長いので安定感も抜群!

コストカット穴が出来てから摩擦係数が小さくなり、Holdが弱くなるのでは?という懸念があったのだが、今回、その心配は無いという証拠を見つけた。

それは・・・


2012-02-27 08ペン芯にコストカット穴に合わせた盛り上がりがあるのじゃ。左画像の赤丸で囲った部分がそれ。ペン先のコストカット穴は、同じ形状をしたペン芯の凸部分に嵌まるようになっている。従って横に強い力が加わっても、ずれないのじゃ。

ここが他社のコストカット穴と大幅に違うところ。コストカット穴を入れるのに合わせて、ペン芯の設計も変えていた!不覚にもいままで気付かなかった!

やはりMontblancは侮れない!最近のペン先の研ぎの具合の良さと合わせて考えると、企業体力の向上は、かならずや製品に表れてくる・・・ということなのだろう。ブランド化だとか堕落したとか、さんざん旧来のMontblancファンから悪口を言われてきたが、今のMontblanc製萬年筆は、まぎれもなく世界のトップ水準の品質を持っていると言えよう。もっとも拙者はMontblanc萬年筆で筆記しようとは露程も思わないが・・・

2012-02-27 092012-02-27 10こちらができあがり。Mの丸研ぎだったペンポイント先端部を落として角研ぎにした。これで筆記時のピンボケは無くなる。またいったんItalic風にエッジを落とした後でスイートスポットを削り込んだので、字形はなんとなく斜体風になる。

それにしてもにゅるにゅるとした筆記感はいい!横書きをすることを前提とすれば、この萬年筆、このペン先が持てる最高性能に近い状態を引き出せたのではないかと思う。

ただし、生贄なので、依頼人の希望は一切無視している。先方はタコスペ・コレドM風に・・・という希望だったがNo.149にコレドMは似合わないので却下した。生贄はその萬年筆の持つ潜在能力を引き出すことが目的で、依頼人の希望は二の次となる。これだけは忘れないようにな。お約束じゃよ!


【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
おおーーー、感涙です。
Posted by Amulor at 2012年02月28日 17:37