今回は最近独逸から届いたM405に特殊調整を施す実験。記憶を辿ってみるとM400系を購入するのは(M710トレドを除外すれば)おそらく生まれて初めての経験となる。#500は何本も購入した記憶があるのだが、通常のM400/M405は初めて。
もちろん調整は50本以上している。従って【依頼者の書き癖に合わせた調整】はお手の物だが、今回やりたかったのは、特殊研ぎを施したペン先のサンプルを作ること。拙者の場合【臆病者のフランケンシュタイン男爵型】調整なので、美容整形に近い手術。見栄えは変わるが、身体的能力はそれほど変化が無いのが特徴。美容整形して性格が明るくなる・・・ような改造かな?
その美容整形を施したM400系をサンプルとして手元に置きたかったので作ってみた。すなわち自分用のタコスペ・超不細工なのだが、字幅はEF-UEFではなく、F-EF程度にしている。このペンで(相馬屋製原稿用紙ではなく)通常のコピー用紙(一度カラーレーザープリンターを通ったもの)に書けばEF-UEFとなる。
すなわち、とりあえず出来た書類に修正を書き込む為に使う萬年筆を意識して研いでみた。書く紙によって太さに大きな違いがある事を今更ながら意識するようになったので、今回はソレも実験項目に入れた。こちらは調整前のペン先を上から見た画像。子ペリカン一匹で、丸研ぎになった最も新しいペンポイントだが、左右のアンバランスはない。切り割りが中央にきているだけではなく、ペンポイントも綺麗に中心に切れ目が入っている。
画像ではわからないがスリットもわずかに開いており、インクフローも十分にある・・・というかEFにしては多すぎるくらいある。また厳密に言えば、ペン先がほんの少しだけ前に寄っている。
その量はペン芯の先端部が見える位置がペン先刻印の幅だけ前に寄っていた方がいいなぁ・・・という程度。書き味にさしたる差は出ない。というか大当たりのペン先!
調整を施そうと思って購入したような時に限って、調整がいらないような良い状態のブツが手に入る・・・うれしいことなのだが、なんとなく調整を施すのがもったいない。横顔を見てもまったく破綻の無い美しさ。ペンポイントの整った状態もすばらしい!これに超不細工な調整を施してどうするの?というツッコミを自分でしたいほど。
コリコリと極細らしい筆記感を残して紙に文字が刻まれていく。ガリガリと引っ掛かることもなく良い感じ!もしこれに店頭で出会ったら、ほとんどの人が感激して購入してしまうほどの書き味なのじゃ。ただし、唯一気になったのが、ペン先がわずかだけ背開きになっていること。見栄えだけの問題なのだが、なんとなく気になる。
実はEFくらいまで細くなると、背開きは問題ではなくなる。少し筆圧を書けた段階でスリットが平行となるので筆記中に引っ掛かったりはしない。
ただひとつ、裏書きをする場合に困るのじゃ。通常筆記で背開きということは、裏書きにすれば腹開き。従って筆圧をかけないで書いていれば、裏ではインクフローが良い筆記が楽しめるのだが、エッジが引っ掛かる。
残念ながらこの個体でも裏書きするとエッジが気になる。そこで表書きではもっとEFらしい細い字幅にすること、裏書きではエッジがひっかからなくて太めの字幅が実現できるような研ぎ・・・ということでタコスペ・超不細工研ぎを施すことにした。ただし、カラーレーザーを通した紙に書くことを前提としているので、字幅は太めに調整するので、タコスペ・超不細工一歩手前研ぎとした。亜流じゃな。こちらが調整後のペン先。通常のタコスペ・超不細工と少し違うの、先端部が角研ぎになっていないこと。その分横線が若干太くなる。カラーレーザープリンターの中を通ると熱のせいか少しだけインクのノリが悪くなり、線が細くなるのでその対策じゃ。
ペン先と首軸の位置、ペン芯とペン先の位置関係は理想どおりになった。ただしペンポイントの形状は研ぐ前と比べると不細工になる。これが命名された理由でもある。肉眼で見える形や書き味は良いが、ルーペで拡大してみると不細工な形状もある・・・美容整形の痕跡が見えるわけじゃ。こちらが調整後の横顔。これが超不細工の真骨頂。整形前の少女の丸顔が、目鼻立ちの整った個性的な顔立ちに!と言えば聞こえは良いが哲学的に言えば・・・不細工この上ない。
ところがインクを入れて書いてみると評価は一変する。表書きすれば、以前よりは細い線が引っ掛かりなくスラスラと書ける。裏書きすれば、何コレ〜!というほどヌラヌラの中細線が書ける。これこそが超不細工の真骨頂!
この書き味を楽しみたくなったので、若干字幅は太くなるが、プラチナのカーボンブラックを入れる事にした。あ〜至高の書き味!
【 今回執筆時間:5時間 】 画像準備1h 修理調整2h 記事執筆2h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間