今回の依頼品はPelikan #500 14C-B。初期の品はヘロヘロに柔らかいニブが付いており、その形だけから判断できる。
現行のM400はシリーズ全体とのデザインの整合性の関係で、キャップリングが2本になり、また尻軸にも2本リングが入っているが、#500にはそれがない。VintageのPelikan 400と同じデザインを踏襲したのであろう。ずっと#500の方がシンプルで良いなぁ・・・と思っていたが、最近の拙者はM400に傾倒しているので、やはり現行品に惹かれるようになった。ずいぶんとインクのシミが付いたペン先。こんなの初めて!流水にさらせばすぐに綺麗になるのだが、保存の悪さでこういう紋様が出てくるのはおもしろい。既に清掃してしまったので手遅れだが、このまま残しておいてもおもしろかったかも?
パッと見たところでは、ヘロヘロニブと比べて、首軸寄りの部分が絞られており、ペン先の斜面もなだらか。M250のペン先を移植したかな?と思ったのだが、実際には筆圧でかなり開くニブであった。またBであるにもかかわらず丸研ぎになっている。Bなら角研ぎでないとおもしろい字にならない。こちらが横顔。ペンポイントの背中側は見事な平面に研がれている。おそらくは工場出荷時からこうなっていたのであろう。これは#600の18C-Bとも同じ仕上げ。ただ、ペンポイント先端部分の仕上げには多少違和感がある。
当時の#500の#600のBの研ぎは角研ぎだった。ということは横から見てもペンポイントは長方形でStubのような研ぎが多いのだが、綺麗な斜面が形作られている。しかも自己調整ではなさそう。ということは、こういう調整をして出荷されていた#500もあるということ。14C-Fの後、14C-HFのように【Hard】の頭文字を入れるようになり、同時にペン先が硬くなったのだが、ひょっとすると、その前にマイナーチェンジがあったのかもしれない。
Pilotはペン先のお辞儀を減じる設計変更をした際、マスコミに発表した。拙者はそれを新聞で知り、すぐに古いペン先を持つ萬年筆を買い集めた。ただしこういう設計変更を発表する会社の方が圧倒的に少ない(というか後にも先にもコレしか聞いたことがない)のは残念。拙者の想像ではこのBは最初期のニブではないように思う。あるいは、拙者が最初期と思っている前に発売されたものか、プロトタイプかも?ペン先をソケットから外し、流水と超電解水で洗って、表面をさっと金磨き布で軽く擦った状態がコレ。見事なのはスリットが入っている位置!ハート穴の真ん中に切り割りが来ているし、ペンポイントもちょうど二分割されている。当時のペン先作りの品質管理は厳しかったんだろうなぁ・・・
あっ!Pelikan #500というのは日本だけの商品番号であって、本国ではM400と呼んでいた。またPelikan Book(古い方)には、日本ではM500という名称で発売されたと書いてある。ということは、彼らの呼ぶM400とM500では研ぎに差をつけたのかもしれない。元々は日本からの強烈なPushで発売に至ったのがM400/500だったらしいので、十分に考えられる。拙者が入手している#500や#600は全てが海外からの入手なので角研ぎなだけで、国内で販売された物は丸研ぎに研ぎ直して出荷されたのかも?