水曜日の調整報告 【 Parker 75 純銀軸 Blog史上最大の修理! 】

左のようなバネだけを50個ほど入手した。いっぱいあるのでキャップが緩くなったParker 75があれば、交換して差し上げますぞ。
これをインナーキャップ画像の左側の部品にとりつければ、完璧なクリップ感がよみがえるはず。現在、この部品は日本に向かっているはず。到着が楽しみじゃ!ただし、天冠が硬くて外れない物には使えないのであしからず。

コンバーターは左画像の中段のものが入っていた。上段は初期の物、下段は後期のものだが、その後期の物の廻りに紙を巻いて太くしてある。
たしかに初期のコンバーターでも後期のコンバーターでもスカスカ!といって紙巻きでもスカスカ!これはおかしい。

また首軸からペン先を引き抜いたら、左画像下のような部品が抜けた。なんとペン芯が途中で折れている。折れて残った部品が首軸の中に詰まってえらいことになっている。
そこで、部品箱にあった画像上段のペンポイントの無いペン先ユニットを取り出してペン先を外してペン芯として使う事にした。ただしXFとペン芯に書かれているので、その部分は削り取って誤解の無いように加工した。

さらに、ペン先はスリットがガタガタで使い物にならないので、左のペン先ユニット(ペン芯の溝がガタガタで使用不能)についていた14K-Mのペン先を、前述のまともなペン芯に取り付けることにした。
ここまでくるとニコイチどころではなく、一体何本のポンコツから蘇生されるのかを数えるのも面倒なほど・・・

首軸の先端部の金属は捻れば外れた。これは外れない物もある。外れる場合は接着剤が効かなくなっているケースであり、100%インク漏れが発生する。そこで接着剤をつけて固定したのだが・・・
やはりコンバーターがスカスカ!もしやと思って中を覗いてみたら、国産でいうところのヤリが無い!すなわち、ペン芯の後端をガードし、カートリッジの栓を破る機能を持ったヤリが折れているのじゃ。この状態でカートリッジを無理矢理押し込んだら、ペン芯の端は折れて、部品が首軸に詰まって逝ってしまう。実は首軸はこの状態だった。
そこでゴミ箱から捨てた首軸を拾い、1時間以上かけて洗浄し、ペン芯にセットしたペン先を取り付けた。

左画像がその状態。綺麗に清掃したので、捨てるほど酷い状態だったとは思われない。やはりどんなに汚い状態であっても部品は捨てるべきではないと反省。どういう用途に利用できるかはわからない。たとえ今は思いつかなくても、将来に技術革新、あるいは、将来身につけた技で使えるようになるかもしれない。
壊れた部品があれば、ぜひ萬年筆研究会【WAGNER】に寄付して下され、どこかで死にかけの萬年筆を蘇えさせるのに役立つかもしれないのでな。


こちらはMのペン先をPelikanのBの形状に研ぎ直した状態。先端部の画像が赤色になっているのは、多少お辞儀をしているから。
普通は見栄えの観点からお辞儀はさせないのだが、書き味ならお辞儀をさせた方が上。今回は、どうせフランケンシュタイン修理なので、書き味にこだわってみた。じつはペン先の斜面も研いで形を整えてある。
スリットは少し拡げ、インクフローが潤沢になるように加工した。


上で述べたお辞儀加減はこの程度。ほんの少しだがタッチはかなり変わる。
また上から見ると角研ぎだが、横から見ると丸研ぎになっているように見える。が、違うんだなコレが!ちゃんとスイートスポットは入っている。
従ってParker 75にしてはヌルヌル感がある。こういう冒険は、フランケンちゃんでしか出来ないが、仕上がりは思った以上に良くなった!


最後に燻しをかけたのだが、前回のように熱湯に燻し液を数滴落とすタイプではなく、燻し液を筆で振り付ける形式の液を使ってみた。これも実験!
非常に黒くなるのだが、変化が遅いので時間がかかるのと、ムラが多い。そこでぞうきんで拭き取っていたところ、思わぬ発見をした。擦ると表面の黒く変色した部分のみが剥がれ、溝の黒い部分は残ってくれる。

ということは、購入当初のようなベースの黒いラインが復活したことになる。清掃時に黒いラインも全て綺麗になり、つるっとした感じになってしまっていたのが、コントラストが上がって良い感じに復活した。
失敗から新たな発見が生まれた!
エサキダイオードのようだと悦に入っている。困難な修理ほど楽しいのはこういう発見があるから!
自分ではすぐに忘れてしまうので、ここに記録として残しておく。なを使った燻し液は【
銀黒】というもの。燻し液としてはイマイチだが、今回に限り大成功であった。
あ、そうそう、クリップはフラットトップのころの羽根の少ない物に変えてある。いったい何本のParker 75の部品が使われたのだろうか?
米国では今だにParker 75の修理用パーツが多数販売されている事実に遭遇し、大量浪費の代表のように思われている米国を少しだけ見直した。
【 今回執筆時間:10.5時間 】 画像準備3.5h 修理調整5h 記事執筆2h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
Posted by pelikan_1931 at 07:00│
Comments(25)│
mixiチェック
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萬年筆調整
野地賢二さん
”
個別相談に関しては、左列のLinksの上から2つめの、"萬年筆談話室連絡箱"に詳細なトラブル内容を書き込んで下さい。
はじめまして、キャップが緩くて困っています。
この記事を拝見してバネを変えれば直ると知りました。
交換していただけるしょうか?
ご連絡お待ちしています。宜しくお願いします。
申し訳有りませんでした
家族が急病となり参加できませんでした
またの機会にお願いします。m(_ _)m
大阪改め田中さん
では元町でお待ちしておりまーす!
ご連絡ありがとうございます
丁度来月に元町で開かれるという事なので
行ってみたいと思っております、よろしくお願いします。
大阪さん
萬年筆研究会【WAGNER】に参加し、会員とならないと修理も調整も出来ないルールでーす。
どこかで入会下され。
はじめまして
キャップのスカスカなパーカー情報を探してたどり着きました
なにぶん古いもので当方素人な為詳しくわかりませんが
非常に似ているペンなため書き込んだ次第です
スカスカなパーカーノキャップが治ればありがたいです。
気に入って使っているので何とかしたいと思ってます連絡方法等よろしくおねがいします。
後藤展城 さん
天冠が外れれば交換は可能です。部品は持って行きます。
水道橋でお待ちしていまーす!
水曜日の調整報告 【 Parker 75 純銀軸 Blog史上最大の修理! 】2012年02月29日を見ました。
私もParker75万年筆のインナーキャップのばねが折れて困っています。部品の在庫はありますでしょうか。2016年8月13日の萬年筆研究会【WAGNER】へ参加させていただきますのでお譲り願えませんでしょうか。2本あります。また、交換のやり方も教えていただくと助かります。よろしくお願いいたします。
COOLMAXさん
それは良い兆候です。天冠を左に捻って外れたら、h割り箸などでインナーキャップを天冠がわから押し出してリングを交換し、再度口側から押し込み、クリップを固定して下さいね。
本日はありがとうございました。
帰宅しまして556に75のキャップ先だけ漬け込んだところ、繋ぎ目からかなり発泡しました。
もしかすると錆びがとれるんじゃないかと楽しみです。
またお目にかかりたいと思います。
coolmaxさん
それではバネを持参します。
こんばんわ
押し迫ってからで申し訳ありません。
3/14の午後、横浜会場に伺います。
新規会員申込書もダウンロードしました。
よろしくお願いします。
それは助かります。
当方横浜在住ですので3/14の文化情報センターに伺おうと思います。
また近くになりましたらご連絡差し上げます。
たのしみです。
COOLMAXさん
在庫はうじゃうじゃあります。萬年筆研究会【WAGNER】へ参加されるタイミングでコメントいただければ持参しますよ。
すみません。
まだキャップ内のバネは在庫してますでしょうか?
愛用の75SGのバネが1本折れて困ってます。
できましたら修理お願いします。
こんにちは。今回の修理は、外見も全く別物。
魔法使いの仕業にしか見えません。
(あっ、言い過ぎました。すみません。)
大量のバネ!ファンタスティック!よだれが出て来そうです。
こんなものが今でも流通しているとは、アメリカは奥が深いですね。
monolith6さん
> 5枚目の画像にある、インナー・キャップに追加された白い樹脂は、純正パーツではありません
てっきり純正だと思っていたので分解してみました。
おっしゃるとおり、溝の下を削って接着剤で白い部分をひっつてていました。
なかなかやるなぁ!と感心しました。コンバーターの改造といい、なかなか良い発想をした人が修理したようです。もっとも成功はしていませんが。
monolith6さん
温泉に一緒に入るのは良いですね。でも何本もあるり、まるで温泉卵のようにざるに入れて浸けたりして・・・
めだかさん
部品が到着したら試してみて下さい。
実はこのバネが弱ったのを復活させるのは、川口先生の得意技でした。
書き忘れました。5枚目の画像にある、インナー・キャップに追加された白い樹脂は、純正パーツではありません。誰かが修理する際に、金属の純正バネを調達できず、間に合わせで軸の内径が似通っているものを見つけ、程良い長さに切って継ぎ足したものと思います。
尻軸からタッシーが外せるとは驚きですが、技術レベルが高そうなので私がやったら100%失敗するでしょう。
一旦廃棄した首軸は、こうして見るとインク痩せしていた個体なのか分からないほどですね。
彫った格子の部分に硫化したものが残るこの方法、私は実は別の方法を実施しようとして暖めているアイデアがあります。それは例えば群馬の草津温泉のように、硫黄分の強い温泉に、この鞘軸や胴軸と一緒に入浴して、全面的に黒くしてから銀磨きクロスで表面を磨き、彫りの部分は自然と残る、というものです。この手の温泉では、銀のペンダントや指輪は外して入浴して下さい、さもないと真っ黒に、という注意喚起からヒントを得たものです。着想から早10年、未だに草津に行けない私。今日のように雪模様の日には、温泉が恋しいですねぇ!
そういえば、「大魔王」の改造も【劇的ビフォーアフター】なものが多いですね。
最近、イタリックニブの75を愛用しています。キャップが緩くなっても、修理して頂けるとわかり、これで安心して使えます。
めだかさん
TV番組で言えば【劇的ビフォーアフター】の世界ですかね?
ス、スゴイ!
ここまで来ると、修理と言うより「改造」ですね。