今回は現行品のMontblanc No.146 14K-Bじゃ。実は、これは過去に拙者がStub化をやったことがある。その時にはタコスペ・イチオシは開発されていなかったので、別の方式でStub化を図った。
依頼者はM800系の限定品を次々にStubに研いでいる根っからのStub好きなのだが、最近ではStubというよりも、Italicと呼んだ方は良いほどの横細な線が好みとなってきている。
M800のB〜3Bは、二匹子ペリカンのころまでは角研ぎだったので、Stub(Italic)研ぎには適しているのだが、Montblancは角研ぎに腹を丸めて出荷しているので、Italicには向いていない。そこで以前拙者が施していた研ぎが左じゃ。この研ぎは萬年筆研究会【WAGNER】の会場内で行われたので、時間の関係で仕上げ磨きが不十分。従ってペンポイント周辺にペーパーで研磨した際の擦り傷が残っている。これはインクを抜いて、金磨き布の上で擦ればすぐに消えてしまう。後でやっておこう。
ペンポイントの先端部を平たく落とし、BBのような形状に研いでいる。ただし単なるBBではなく、微妙に先端部を円弧状にしているのがわかるかな?この処置を施しておくと、書き出し位置が多少ズレても、外エッジが紙に衝突して書き出しの感触が良くないという現象を抑えられる。スリットはやや広めなのでインクフローは良い。Italic風にするならやや絞った方が良かろう。こちらは横顔。依頼人はStub調の文字を書くときには紙を斜めにし、かなり先端部を持って書く。従ってスイートスポットはかなり前の方に作ってある。
一方で寝かせて書けば通常の太字になるように調整してあるのだが、Italic色が強くなったのであれば、Italicを書く場合の固定的な位置決めをした方が良い。スイート・スポットというよりも、スイート・ラインとでも呼ぶ1本の線のように研がれたエッジが紙に当たって極細の横線を引くものじゃ。この場合、書き味云々ではなく、細い事が重要!かなりの研磨をするので、ペン芯とペン先をメンディングテープでマスキングしておく。直接擦らなくても、削った粉が付着し、それが傷をつける事もある。
二段目の画像の右側を見れば、それによって衝いた傷がわかるであろう。通常は見えないが、ルーペで見ればわかる。Stub(Italic)に研ぎ直したあとで、表面磨きを施したペン先じゃ。以前あった細かい傷が消えているのがわかろう。
こちら側は研磨は行っておらず、金磨き布による磨きと、スリットを狭めたことのみ。こちら側がItalic色を強めた研ぎ。赤丸で囲った部分で横線を引くと、髪の毛よりも細い線幅になる。腹を平べったく削り取れればいいのだが、Montblancの大玉には向いていない。ポロっとペンポイントが外れるリスクがある。そこでペンポイントの斜面に強引にItalic-Sweet-Lineを削り込んだ。見た目は不細工なのだが綺麗なItalicの極細横線がひける。またエッジの角度が90度よりも広いので、本来のItalicほどにカリカリとはしない。ここはタコスペ・イチオシの研ぎ方を応用している。
Italicの正しい書き方は、線をひく方向に合わせてペンを持ち替えながら文字を刻んでいくらしい。ただItalic調が好きなだけで通常スピードで文字を書きたい人には、Stub(Italic)に研いだペンポイントで、多少の引っ掛かりは無視してもシャシャシャっと文字を書きたいのだと思う。それをにゅらにゅらっと書くにはタコスペ・イチオシが適していると思われるので、調整がこなれてきたら紹介しよう。
【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間