2012年03月14日

水曜日の調整報告 【 Parker 75 Flat Top 14K-B 左右不均一 】

2012-03-14 01まだまだ続くParker 75修理シリーズ。今回はフラットトップのモデル。よくオークションではフラットトップ=初期モデルと誤記されているが、真の初期モデルは首軸を同軸にねじ込む部分が金属製。今回紹介するのは、その部分が樹脂製なので初年度モデルではない。

初年度モデルの首軸は ===> こちら

2012-03-14 022012-03-14 03フラットトップのモデルには首軸に【0】マークが付いている。この位置にハート穴を合わせるのが標準で、書き癖に合わせてペン先ユニットを左右に捻ることが出来るようになっている。

これは親指と人差し指を固定するように首軸が成型されているがために必要なマーク。拙者のように純銀の胴軸に人差し指をかける輩にとっては無意味。

国内で販売されたParker 75にしては珍しいBニブ付き。それはいいのだが先端部の左右がかなりアンバランス。右側(画像では下側)の方がずいぶんと貼り出している。これは矯正した方が見栄えが良い。スリットも多少は拡げておこう。

2012-03-14 04コチラは横顔。丸い大きなペンポイントが付いている。左右はある程度削っているが、側面から見ると球状に見える。

このままの状態で筆記するとParker 75らしいゴツツとした書き味になる。MくらいならともかくBではゴツゴツ感が筆記感を損なわせるので、書き味の改善を図ることにする。

2012-03-14 05左側が天冠で、右が尻軸先端部。通常、フラットトップはこの部分の鍍金が剥がれて、かなりみすぼらしい印象になりやすいのだが、この個体では鍍金はごく一部しか剥がれていない。

外観に傷が一切無いことから、文具店に飾られていて、たまに試し書きで使われた・・・という程度の劣化具合。ただ、首軸の痩せは既に進行しており、首軸が凸凹状態になっている部分もある。


2012-03-14 06まずは米国からやっと届いたバネ部品を交換した。左側が交換前で、右が交換後。バネが外側に向かって曲がっている角度が違う。購入当初は右側の急角度だった物が、時間と共に劣化して左のように寝てしまう。

そういう場合は拙者のようにバネ自体を交換するか、残されたバネを外側に曲げてバネ力を回復する。拙者も以前は手曲げしていたが、今週からは交換している。

2012-03-14 07コチラはアスコルビン酸に長時間つけて洗浄した後で、ペン先調整を施した状態。

ペン先とペン芯を分離し、左右のペン先の巾が均等になるように研いでいった。そしてそれを接着愛もシェラックも付けずに差し込んだ。もちろん、ペン先の表面研磨もやってあるので、実に美しい。

特に歯ブラシなどでゴシゴシ洗わなくても、アスコルビン酸に水溶液に浸すだけで、ここまで美しくなるとは!

2012-03-14 082012-03-14 09こちらがペンポイントの拡大図と横顔。
ペンポイントは角研ぎに直し、ペンポイントにきっちりとスイートスポットを削り込んでから、各種ペーパーで磨いた。

正直、STUBに研いだ方がおもしろいかとは思ったのだが、貴重はBニブということで、左右のバランスを取る程度に研いだだけだが、書き味は激変した!

BなのにParker 75らしいゴリゴリ感をまったく感じない。筆圧をかけるとペン先がクイっと上に曲がってしまう。この感触が実に良い!世界に一本の書き味かもしれない。

2012-03-14 10こちらが全体像。今回は燻し銀液などは一切使っていない。銅磨き布で縦横を磨いたところ、軸の汚れが落ちて、新品同様になった。

最近は燻し銀がブームだが、いったん燻してしまうと、もとの状態に戻すのが実に大変!燻す際には覚悟が必要じゃな!

【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
 むと さん、横から失礼します。

 ペン芯が殆ど抵抗なく抜けるという状態は、ちょっと緩すぎると思われます。

 紙にニブを下ろした時点で、ニブは紙にフラットに当たっていても、握り方&筆記時の圧力のかかり方によっては、ニブも同じ方向にズルンと動いてしまいそうな気がします。
Posted by monolith6 at 2012年03月19日 17:27
お師匠様、パーカー75シリーズ、楽しく拝読させて
頂いております。

私の手持ちのパーカー75Godronは、ペン芯がほとんど
抵抗無く抜けるのですが、こんな感じ宜しいのでしょうか?
回転させると、カチカチといった、抵抗感はあるのですが(^_^;)
Posted by むと at 2012年03月14日 10:52