本日の生贄はVintageのParker Duofold。戦時中のMontblancやPelikanのようにキャップリングが単なる刻みになっている。本来なら金属リングのはずなのだが・・・ひょっとすると米国でも金属の統制をやっていたのかな?米国製品に戦争の影は無かったと思い込んでいた。
軸にもMade In U.S.A. との刻印があるので、英国やカナダで製造されたモノでないのは事実だし、そもそも金ペン先付きだしなぁ・・・と思ってキャップリングの部分をルーペでよく見たら、金属リングが2本とも外れてしまっただけで、元々はリングが入っていたとわかった。
それにしてもかなり擦れが目立つボディじゃ。ここは一発【サンエーパール】で磨いて表面をピカピカにしておこう。ペン先は大型で分厚い。往年のDuofoldらしい形状と、圧ちゃんの筆圧でもビクともしない力強さにあふれている。ところがペン先のハート穴より先端よりには数多くの傷がある。何かにぶつけたのであろうが、かなり深い傷!
これも可能な限り削り取って磨いておこう。元々が肉厚のペン先なので少々の研磨は誤差の範囲じゃ。こちらはペン先先端部の横顔。とりあえず形だけ整えたという程度の研磨状態。当時は、ここから皆さんで書き込んでいけば、書き癖になじんで良くなりますよ・・・という神話があったのかもしれない。このペンポイントの粒子は粗く、かつ、それほど硬くはない。すなわち、いくら研磨してもザラザラ感は少ししか和らがないし、筆圧をかければ、かなりの勢いですり減っていく。
強筆圧でもビクともしないほど丈夫なペン先ではあるが、筆圧をかけないでシュルシュルと筆記するのが適した萬年筆といえよう。過去の経験でも、そういう書き方をする時のDuofoldは極上の筆記感を提供してくれた。残念ながら拙者の所有物ではなかったが・・・インクが出ないとのことであったが、中のプレッシャー・バーは生きていた。というかこれが死んでいたら修理不可能であったろう。
これと同じタイプのプレッシャーバーは現在では部品として販売されていない。拙者としては錆は全て取り除きたかったのだが、研磨するとそれだけ耐久性がなくなりそうなので、金磨き布で表面の錆だけを取り除いた状態で再利用することにする。インクサックはドロドロに溶けていたので、新しいサックを短めに切り、自家製シェラックで首軸後端部に貼り付けてから、パウダーをまぶした状態が左画像。このパウダーを塗ることによって、サックがプレッシャーバーとひっついてしまう事が防げるのであろう。この作業は今までに何百回もやってきたが、非常に楽しい作業の一つ。ああ、直っていくなぁ・・・という充実感がわき上がってくる。
こちらは傷を削り取り、表面を金磨き布で研磨したペン先。これも非常に美しい。先端部が赤色変位しているのは、お辞儀しているから。首軸内に隠れている部分には、ペン先と同じ番号が横書きで刻印されている。特許番号か何かかな?
研磨してみると金には間違いないのだが、何故か14Kという刻印がどこにも無い。これは依頼者も困っていたが、なにか理由があるのだろうか?ご存じの方がいらっしゃったら教えて欲しい・・・