今回の生贄はSehafferのLifetime。これは拙者も過去に何度か所有したことがある名品。この書き味を体験すると一気にSheaferファンになってしまう。何十年も前の筆記具関係のムック本で、世界のコレクターが【VintageのSheafferが好き】と書かれていたが、最初にLifetimeを使ったときに、【なるほどぅ!】と納得した記憶がある。
画像は上がカメラで撮影した映像、下がスキャナー撮影の映像。肉眼で見るキャップと胴軸の色の差はほとんど無いのに、スキャナーだとこの差!何でだろう? これほど色の差が無いジェイドグリーン軸は珍しいと思ったのになぁ・・・ペン先は超大型の細字。こいつの書き味はすごい。まだ萬年筆に詳しくない頃、丸善本店の筆記具売り場のK女史が【宝物】といって書かせてくれたのが、少し小ぶりのジェイドグリーン軸だった。その書き味に感動して、最初は【ノンナンセンスみたい】とバカにしていたLifetimeに嵌まっていったのじゃ。刻印文字の多さからペン先の大きさが想像できるかな?また刻印の深さからこのペン先の剛性が想像できるかな?
どう考えてもガチガチに硬いニブなのだが、そこから導き出される快適なインクフローがこの萬年筆の特徴。そして特徴のあるペンポイント付近の形状。この当時はどこもフラットフィードだったように思うが、こういう擦り込みがあるので、Montblancの1950年代モデルでも、なんとなくフラットフィードがいいなぁ・・・と思ってしまう。ペン芯の性能だけなら厚いフィードの方が優れているとはわかっているのだが・・・
ペンポイント根元の金の厚みはすごい!そしてすこしだけお辞儀している。どうやらこのあたりに秘密がありそうなのだが、まだ分析は出来ていない。あまりに書き味が良くて、所有してもすぐに飽きてしまうのじゃ。
2001年ごろに米国のペンショップで購入されたそうだが、最近ボタ落ちが発生したので直してほしいということでやってきた。ペン先の首軸内部に隠れている部分も長く、ぐらつきなど皆無のペン先。ただ20年経過すれば、ゴムサックも劣化するので交換時期が来たのだろうと考えた。むしろ20年間一度もサック交換しないでよくがんばった!と褒めてやりたいくらい。
いつもの事ながら清掃したペン先のスキャナー画像は美しい。昨日、水道橋で開催されたの萬年筆研究会【WAGNER】で新たな調整師補が誕生した。これからも全国で認定調整師補は増えていくと思われるが、今後調整師をめざす方々は、ペン先調整と合わせて修理も手がけなければならない。従っていろんな萬年筆の構造や、ペン先の特徴、どう調整したらどういう書き味になるのかを身を持って体験する必要がある。
究極のペン先調整は、その時代の特徴的な書き味を再現すること。その萬年筆が製造された時に意図された書き味を復活することじゃ。けっしてSheafferの書き味をONOTOの書き味に変えることではない。わかるかな?こちらがサック交換前の状態。サックの弾力はほとんどなく、ごわごわの手触り。ツメでサックを押すとプリっと穴が空いた。限界までゴムが弱っている。もしサックにインクが残ったままで乾燥していたら、ゴムがドロドロに溶けるか、カチカチに固まるかしていたことだろう。
それにしてもゴムサックが太すぎる。太過ぎるゴムサックはペン芯の調整能力を超えてインクが入る危険性が高い。ペン芯性能の低いVintage萬年筆には出来るだけ細くて短めのゴムサックの方が相応しいと常々考えているので、やや細めのサックを取り付けた。インク容量は半分程度になるが、これだけでインク漏れのリスクはほぼ無くなる。サックを指でつまんでみてもすぐに戻る。レバーフィラーの萬年筆はサックを定期的の交換しながら使う物であって、購入したら生涯保証期間中一度もサック交換が必要ないというわけではない。
毎日使うような人は、年に1回くらいは萬年筆研究会【WAGNER】に持ち込んでサック点検をして下され。いつでも無料でサック交換はしているのでな。