
しかし偏屈としては惨敗したことによって、さらに愛おしく感じ、ついに入手してしまった。画像は少しエイジング処理を施した後なので、実物よりは多少色が濃いかもしれない。

神社仏閣の内外装に使われていると書かれてあるのを見て、そういえば・・・と古い記憶が蘇ってきた。小さい頃よく自転車で遊びに行った沖田神社に似たような木目の木があった!もちろん長い間日光にさらされていたので色はあせてはいたが・・・
パイロット一位の木では、この木材に【圧密加工】を施している。具体的には、水蒸気で加熱することで軟化した木材(針葉樹材)をプレスすると圧縮された形状で固まる。その後、さらに水蒸気処理を施すことで密度が増加し、それに伴い強度が大幅に向上するということらしい。
樹脂を注入したり、漆をかけたりはしていないため、そのまま使うとインクで本体が汚れる危険性がある一方で、軸色の変化を楽しめる素材でもある。
実は、ペン先調整のために試し書きしていたとき、赤インクが軸に付着した!その2秒後に超電解水を拭きかけて洗浄したので事なきを得たが、放置していたら汚染されていたのは確実!ということで、少し油分のあるものを表面に塗っておいた。これなら10分くらい汚染を気付かなくてもなんとかなるであろう。
それにしても木目の上品さはすばらしい。大きくて派手な木目よりも、地味で目をこらさないとわからないような木目に惹かれる自分に初めて気付いた。派手好みなのに、木目だけは地味好きだと・・・

ただし、拙者のように筆記角度が45度の人間には、横線を引く際に少しだけカリっとする。これはペンポイントの腹の部分がひっかかるせい。そのような角度で書く人の割合は一般的にはそれほど多くない。ただ萬年筆研究会【WAGNER】では25%以上はいるかもしれない。


スイートスポットはパーソナライズの為に作り込む物。従って市販の萬年筆には絶対にスイートスポットは無い。そんなものを削り込んだら、万人向けでは無くなってしまう。
スイートスポットのある一位の木と無い742を書き比べて見た。実はこんな実験をするのは初めて!
一位の木は当然のことながらペンポイントの腹を削っているので寝かせて書いてもカリカリとしない。またスイートスポットを作りインクフローを多少多くしているので、立てて書いても明らかに書き味に丸みがある。
パイロットの萬年筆は、1年も使い込めば書き味は良くなるので、調整しないで使って欲しい・・・と言われた事もあり、742をそのままで使っている・・・が、やはり自分の書き味に合わせて調整した萬年筆の書き味を味わうと、その差は明確!通常の70度以上の筆記角度で書いても書き味の差が認識できた。
ちゃんとした調整師が、個々人の書き味を認識した上で微調整すれば、オリジナルよりは必ずや手に合う萬年筆になるであろうと今回初めて実感した。ただし、拙者がペン先をいじくり始めた頃は、何の教科書もなく、事例もほとんどなかったので、ほとんどのケースでオリジナルよりも書き味は劣化していた。その数50本以上はあったであろう。
自分でペン先をいじろうとする人は、そういうリスクを覚悟の上で始めなされよ。失敗を調整師やメーカーに尻ぬぐいさせないようにな。失敗したら買い直すのが王道。
拙者がこのBlogを始めた真の理由は、調整の効果を広めて、見よう見まねでペン先を削ってダメにする人を増やすこと。それによって萬年筆を買い直す人を増やし、業界の出荷本数を増やそう・・・という古山画伯の超絶理論に賛同したから!そういう罠があるということを認識した上で、いじるように御願いしますよ!