2012年05月14日

月曜日の調整報告 【 MABIE TODD リングトップ 14C-M インク漏れ? 】

01収納時の全長が10.5センチしかないMABIE TODD(マビートッド)の女性向けリングトップ萬年筆。MABIE TODDはかなり有名なブランドだが、拙者は過去に1本も購入していないはず・・・と調べてみたところチルトンとマビートッドは所有の記録が無かった。別段避けていたわけではなく、たまたま縁が無かったのだろう。

0203この金貼りモデルはかなり厚い金が貼ってある。首軸先端部の金が剥がれている部分を見ると、その厚さがわかろう。 金はインクの酸に強いはずなのにどうしてこのように冒されたのかな?と思い首軸先端部を高倍率ルーペで凝視したところ、インクの滓が隙間に入っていることがわかった。何度もキャップを開け閉めをしている間にインク滓が少しずつ間に入り、その圧力で金が剥がされていったのであろう。

ペン先の寄りはこの世の物とは思えないほど強い!ただ、ペンポイントの丸めは美しい。なんていうか、かなりアンバランスなペン先に思われる。ペン先とペン芯の設計がバラバラだったのか、両者が奏でるハーモニーが感じられない。それぞれが自己主張してお互いの実力の足を引っぱっている感じ。こういうところが拙者と縁が無かった原因かもしれない。

0405インクがきれるということだが、こちらはペン先とペン芯との間の隙間が原因。ペン先の寄りが強いので、ペン先を反らさないと筆記できないが、反らすとインクが切れる・・・となって見捨てられた物がオークションに出て、そういうものが大好物の【赤すきん半】氏にサルベージされたのであろう。

よく見るとペンポイントの研ぎが【タコスペ・コレドM】にそっくり!なぁんだ昔からこういう研ぎはあったんだぁ・・・と少し嬉しくなった。ただしペンポイントの背中では書けるようにはなっていないので、たまたまかもしれない。

06こちらが首軸から外して清掃したペン先。どんなに書き味の悪いペン先であっても、この状態のスキャナー画像だけは美しい。さすがに米国製だけあって金の量を減らすために首軸内部の長さを減らすような設計にはなっていない。ペン芯さえちゃんと設計されていればかなり良い書き味の萬年筆になったであろうに・・・ま、そういうところが米国製萬年筆の魅力でもある。
欠点をあげつらうよりも、そこを慈しんであげてこそ萬年筆愛好家じゃ。反省! http://blog-imgs-37.fc2.com/a/q/u/aquariuselder/2010032500271230a.jpg   

07首軸を外してみると、インクサックもいっしょにポロリと取れた。おやおやインクサックがきちんと接着されていなかったらしい。それでもインク吸入は出来ていたというのが奇跡のようだが、それは特殊なインクサックのおかげ!


08実は半透明の素通しインクサックが使われている。当然、この時代の物ではなく、最近のものだと思われる。サックが硬いので戻りも良く、吸入スピードも速い。唯一の弱点はゴム製ではないのでサックセメント(シェラック)でくっつきにくいこと。

通常のゴム製ならサックセメントで取り付ければ3分後には完全接着しており、水の吸入排出が出来るが、このシリコン製?サックでは、数十分は乾燥させる必要がある。

接着して5分後に尻の方をひっぱるとぬるりと抜けてしまう。ただしその状態でも立派に吸入排出は出来る。不思議じゃ・・・

0910可能な限りペン先の寄りを弱くし、少しでもスムーズに書けるようにはした。ペンポイントが通常の丸研ぎであれば酷い書き味であったろうが、 【タコスペ・コレドM】 風なので、細字を刻むように書くには最適。

しかしどういうシチュエーションでこの萬年筆を使うつもりなのだろうか?今度 【赤すきん半】氏 にお会いしたらぜひ聞いてみたい。その際、意表を突く回答が出ることを密かに期待している。


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(5) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
WOOD BINはスノーケル用のthin wall sacも扱っていますし、バラ買いの単価も他のサイトより安いですね。
Posted by Mont Peli at 2012年05月15日 07:54
Mont Peli さん

スノーケル用の細いサックだけが減ってしまって困ってました。ここなら太さ指定で購入できそうですね。
Posted by pelikan_1931 at 2012年05月15日 05:55
チャッピーさん

全ての金貼りがそうとは限りません。慎重に!時代が進むほど技術も進み薄く腫れるようになったはずなので。
Posted by pelikan_1931 at 2012年05月15日 05:54
>実は半透明の素通しインクサックが使われている。当然、この時代の物ではなく、最近のものだと思われる

「半透明の素通しインクサック」が、最初に登場したのはパーカー51のaerometric モデルで、 'Pli-glass'と呼ばれる樹脂製だったと思います。最近は、シリコン樹脂製のものが製造され、WOOD BIN等で販売されています。
Posted by Mont Peli at 2012年05月14日 16:32
金張りの厚みにかなり驚きました

それまで金張りとは、日本の「金箔」ほどの薄さを張り付けていたんだろうと思ってましたから・・・
各社で厚みに違いはあるんしょうけど

金箔程度の金張りだと思い込んでいたので、金拭き布で磨くのを躊躇してました
これからは遠慮なく磨けます
Posted by チャッピー at 2012年05月14日 12:01