2012年05月16日

水曜日の調整報告 【 Levenger Firenze ブラック&アンバー・マーブル 18K-B 運筆の制約 】

01本日の依頼品はLevenger。これはUSAの通販サイトだったかな?過去にSheafferや伊太利亜メーカーと組んで、Levenger オリジナルの萬年筆を出したり、メーカー在庫整理のために引き受けた高級万年筆を信じられない低価格で販売したりしていた。

たとえば、Wartermanのル・マン100 オペラを199ドルで販売したこともあった。もちろんそういう時には狂ったように注文したものじゃ。Omas のカワイイDemonstratorも99ドルで販売され、こちらは日本からも大勢が注文していた。スチールペン先だったが書き味は秀逸!まだ、萬年筆研究会【WAGNER】など影も形も無い頃。Nifty掲示板仲間とのオフ会に何本も出現して驚いた記憶がある。

この軸は記憶に無いが、なんとなくカトウセイサクショカンパニーとか、ロングプロダクツの製品に似た部品構成。違うのはペン先が18金であることと、キャップリングが純銀であること。ひょっとすると軸だけは日本で作ったのかもしれない。単なる想像だが・・・

0203依頼人によれば、通販で新品未使用を購入し、ペンクリでいじってもらった記憶はあるとのこと。たしかにスリットは開き、インクの出はかなり良い。

ところが、使う紙質の影響か、書き癖が変わった影響か、最近書き出し掠れや、運筆に制限を受けるようになったという。運筆に制限・・・という意味がわからなかったのだが、インクをつけて書いてみてわかった。少し捻るとすぐにインクが出なくなるので筆記角度を変えられないのじゃ。

0405そしてインクが出ない際に少し筆圧が上がってしまったのか、多少ペン先が上に反り、ペン先とペン芯との間に少しだけ隙間が出来ている。

それと少しペン芯が前に寄りすぎており、寝かせて書くとペン芯を擦ってしまいそうな感じがする。これも運筆の自由度を奪っている。

書いてみても、非常に垢抜けない書きごこち。少しでも左右に倒すとエッジが紙に引っ掛かってインクは出ないわ、耳障りの悪い音はするわで、とても使い物にならない。

0607ペン先の裏側を見てみた。インクフローを良くするために裏一面にロジウム鍍金しているのかと思ったがそうではなかった。ペンポイント先端部を下側から見た拡大画像の掲載は初めてではないかなぁ?

四角柱のコーナーを粗いペーパーの上で縦方向にだけ移動させて丸めたような感じに面が削られている。このままでは横方向はスムーズだが、斜め線は厳しいし、少しでも捻りを加えると、エッジが紙に当たって、スリットが紙から離れ、インクが切れてしまう。

08これを直すには、角研ぎを丸研ぎに変える必要がある。左が調整後の姿じゃ。ペンポイントのシルエットが丸っこくなったのがわかるかな?

ペンポイント横の面取りだけではなく、ペンポイントの頂点部分の面取りも行った。こうすれば斜めに書き下ろすときにもスリットがちゃんと紙に当たるはずじゃ。


0910こちらが拡大図。ペン芯は少しだけ後退させた。そしてペンポイントのコーナーも丸く面取りをした。もちろん外側のエッジも丸く面取りし、多少捻ってもスリットが必ず紙に当たるようにした。

さらにペンポイントの腹の部分は、320番のペーパーの上で、依頼人の筆記角度で10文字ほど書いて削れた部分を確認し、同じペーパーの上で8の字旋回を上下・左右の右回り・左回りに各30回ずつ、合計120回やって研磨し、それを1200番、2500番で形を整え、内側のエッジを丸めながら削っていく。最後にエッジだけを5000番で舐める。

絶対にペンポイントの面を5000番で舐めないように!太字の場合はインクフローさえ良ければペンポイント表面がザラザラでもヌラヌラと筆記できる。逆にツルツルだと書き出しでインクがスキップする確率が高まる。これが太字調整のコツじゃ。


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
このモデルはLevengerがstipulaに委託したと聞いたことがあります。ニブはどこ製かは不明です。
Posted by yamamoto at 2012年05月17日 23:05
 ニブはペリカンのハート穴なしOEMと見ましたが、如何でしょう。それにしても LEVENGER 銘の金ペンは初めて見ました。
Posted by monolith6 at 2012年05月17日 18:17
調整でいろいろな工夫が出来るんですね。このような書き心地がいいとは決して言えないペンも調整により改善できることを体験できるのはWAGNER会員だからであり、会員であって本当に良かったと思います。ありがとうございます。

ところでLevengerと言えば、万年筆に興味を持ちだした初期の頃よく利用したものです。まだeBayを始める前の時期で、ネット通販も今ほど普及していなかったため、私にとってはLevengerは外国製万年筆の数少ない購入ルート兼情報源でもあり、カタログが届くと隅から隅まで眺めて過ごしました。私もOmasのデモンストレーター、買いました。懐かしいですね。
Posted by yamamoto at 2012年05月16日 18:20