2012年06月25日

月曜日の調整報告 【 Sheaffer Snorkel 14K-XF 点検! 】

1今回の依頼品は生贄ではなく点検。入手したものの、使用前に問題点がないかどうか確認して・・・というもの。ついでに少しだけ書き味も見て欲しい・・・ちゅう程度。
こういう軽い作業は通常は萬年筆研究会【WAGNER】会場内で行うのだが、依頼人が急いでいたのか、拙者にやる気が失せていたのかわからないが、預かりとなったらしい。

最近持ち込まれるスノーケルは、ズタボロのものが多かったのだが、久方ぶりの美品。スノーケルは、そもそも設計段階で失敗している。
水分まみれになるのがわかりきっている萬年筆に錆びやすい鉄製部品を使うのは言語道断のはず。しかもデザイン重視でインク保持量があまりに少ない。

eBayが登場するまで、Sheafferのスノーケルといえば、珍品中の珍品だった。金に糸目は付けないといっても、出会う機会すらほとんどなかった。当時はユーロボックスも知らなかったしな・・・

eBayで最初に見つけたとき、その安さに目を疑った。日本で35,000円したMint品が数十ドルで売られていた!まだ、ぴーひゃらら〜の9600bpiの通信速度のころ。
玉石金剛でおもしろい時代だった。ずいぶんと授業料は払った気がするが・・・

23ペン先はわずかに開いており、インクフローは良さそうだが、ずいぶんと強くスリットをこじ開けた痕跡がある。
またスキャナー画像の色変化から、ずいぶんとペン先が上に反っているように思われる。

45横顔を見てみると、こりゃまたずいぶんと海老ぞりのペン先じゃ!これほど反った物にはめっったに出会えない。
といって書き味が良いわけでもない。画像を見ただけでは想像も出来ないが、ガリガリと紙を削るような酷い書き味。

6正面からペン先を眺めてみると、なんと円盤研ぎ。しかも円盤の両端の幅が狭くなっているのでエッジが立っている。まるで紙を削る目的で研がれたようなペンポイント!
よく見ると、向かって左側のペンポイントの方が背が高い。柔らかいペン先だと紙に下ろした段階で底辺の高さは揃うが、これほど肉厚のペンポイントでは微修正されることはない。
一般的に米国メーカーは極細用のペンポイントを作るのが苦手・・・というかあまり需要が無いのかもしれない。筆記体を書くにはM程度が一番書きやすいからなぁ。
いずれにせよ見栄えもあるのでペンポイントの高さも揃えておこう。細字調整にはタコスペ・超不細工が最適なのだが、海老ぞりペンポイントには適用できないのが残念!

7最も錆びやすいバネはほとんど無傷。珍しいほど状態が良い。またスノーケル管にも問題はなく、また中のゴムサックも生きている。
実はスノーケル用のゴムサックを使い果たしているので、現在ではスノーケルの修理は受け付けていない。この個体はサックが生きていたので引き受けたのじゃ。

8こちらがそれ以外の部品をチェックしたもの。胴軸内のOリングが硬化していたが、吸入はなんとか出来ていた。これはOリングにシリコングリースを塗りまくって延命措置をしていたから。
これではいずれ吸入が弱くなるので、Oリングを交換することにした。

09左が交換用の黒いOリングで、右が本体に入っていたオリジナルのOリング。既に50年ほど経過しているので弾力は皆無に近い。ごくろうさん!と声をかけて交換した。
白いOリングの切れ目は外すときに切れたもの。針で押し、ピンセットで引っぱる際に切れた!やはり相当に脆くなっている。
人間も50歳近くなるとあちこちの油が切れるが、このOリングを見ているとなるほどな・・・と納得させられる。
ゴム製リングという単純なものでも劣化するのだから、日常的に酷使されている人間の体にガタが来るのは当然じゃ!
木曜日に会った68歳の友人(男性)は、週に4日間エアロビをし、1日は筋トレしているとか。心臓手術から生還して1年ほどでこの元気!やはり団塊の世代は強い!
平日のジムは年配者が多く、カレも先輩の大勢の女性陣(70歳代)に【イタちゃん】と呼ばれてかわいがられているらしい。
運動嫌いの拙者には、そういうモテかたは期待できないので、何か他の方法を考えねば・・・

10こちらが調整済みのペン先。少しだけ反りを戻した。
スノーケルの細字にはたまにオオッ!と声をあげたくなるように書き味の良いものがあるが、残念ながらこの個体に歓声をあげさせるような調整を施すことは出来なかった。
やはり萬年筆も持って生まれた素質を越えた書き味には出来ない。素質のどこまで追い込めるかが腕の見せ所じゃな。


【 今回執筆時間:2.5時間 】 画像準備1h 修理調整0.5記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
   


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
メンテナンスありがとうございます。
初めて入手したスノーケルでしたので、自分でいじってみたかったのですが、
その前に、一度見てもらっておくべきだと思ってペントレ初日にお預けしたものです。
Oリングの交換ありがとうございます。

今度の御徒町での例会のときに受け取りたいと思います。
Posted by シロウ at 2012年07月01日 13:24