今回の依頼品はPelikan M800の旧型モデル。天冠と尻軸が初代のモデル。今見てもM800にはこの天冠が似合う。
拙者の趣味から言えば、M800のゴールドトリム系には、この旧型天冠+旧型尻軸がもっとも格好良い!
M805に関しては複雑で、黒軸ならシルバーのプリント天冠が見合うし、青縞に関しては現行のシルバー天冠が似合うと思う。トレドM900はプリント天冠以外なら何でも好き。
今回のモデルには14C-BBのペン先が付いている。キャップの刻印はW.- Germanyではなく、Germanyなので、ペン先だけ後で交換したものと思われる。
依頼人は、この状態の組み合わせで中古萬年筆店から購入されたらしい。
ペン先とペン芯の位置関係、首軸から前に出ているペン先の量とも、拙者の好みと100%一致しているので、拙者が調整した物が流れた物かも?という期待を持ったのだが・・・
ペンポイントの調整の癖が拙者とは違うのに加えて、ペン芯をソケットに挿す位置が拙者と180度違っていた。
拙者は通常はソケット穴の浅い方にペン芯の突起を合わせて押し込むのだが、今回のものは深い方に押し込んであった。
また横顔のペンポイント斜面にくっきりと研いだ痕が残っている。拙者ならわからないように丸めているはずじゃ。よって自身の調整ではないとの結論。少し残念!
ペン先は多少汚れていたのと、ペン芯から外すとスリットが密着した状態になった。これが多少インクフローが悪い原因じゃな。
下のように、綺麗に清掃し、スリットを少しだけ開いて再度装填した。この画像を見ていると、ペン先もたまには分解清掃をしてあげなければな・・・と感じてしまう。
清掃後の美しさは半端ではない!また切り割りもちゃんと真ん中を通っている。
最近のペン先社内生産、丸研ぎ化、スリットズレ・・・などと考えていくと、ペン先外注してたときの方がペン先は綺麗だったなぁ・・・と考えてしまう。
書き味はともかく、見栄えは14Cの頃、そして18C-PFや18C-ENの時代の方が良かったのは事実じゃ。
Pelikan M800の秀逸な書き味を支えるのが、このペン芯。根元の下側にゴミのような黒い部分があるが、ここが材料を噴出注入する場所。
シュっと一吹きで、この複雑なペン芯が一瞬で出来上がるのじゃ。ああ、工場見学したいなぁ・・・
このペン芯はセーラーのペン芯(左右非対称)とは違って、左右対称。回転吸入式専用なので、ペン芯後部にカートリッジに突っ込むための細管がない。
そのため、空気流入にそれほど気を使わないでも呼吸困難になるリスクは少ないのかもしれない。