こちらは、名古屋で持ち込まれたPilot 743。15号のフォルカンのペン先が付いたモデル。聞くところによればPilotのフォルカンは10号ペン先の方が柔らかいとか。
自分で確かめたわけではないのでなんともいえないが、15号のフォルカンも十分に柔らかいのは事実。
かなり大柄な萬年筆であり、素材がプラスティック製でなかったらかなり重厚な萬年筆であったろう。
国産高級萬年筆は、軸の豪華さで付加価値を付けているモデル(純銀、エボナイト、漆)と、軸は簡素でお買い得価格(ペン先だけにお金をかけている)の萬年筆が二極化しているように思われる。
たとえば、No.149などは、ペン先はMontblancの最高峰であり、軸も豪華だが10万円は切っている。回転吸入式で!
それがPilotになると、845や一位の木で52,500円。う〜ん、この価格とスペックではフラッグシップとは言えない。
そうか、国産各社には、これぞフラッグシップ!という【ど定番】がないんだ。キングプロフィットだって模様や素材やペン先のバリエーションがありすぎ、どれが定番かわかりにくくなっている。
プラチナではプラチナ・プラチナのプラチナ製ペン先付きなのだろうが、まだスリップシール対応できていない。
国産各社には、技術を結集した【ど定番】のフラッグシップ(税抜:10万円)を出して欲しい。かならず回転吸入式で軸素材もそこそこ高価なもの。
だれもが憧れるようなスペックとペン先バリエーションと、ビスポークのサービス。
まさにMontblancが現在行っているサービスこそが、萬年筆愛好家がメーカーに望んでいる事なのではないかな?数を売るビジネスもいいが、夢を売るビジネスも重要じゃ・・・
さて今回のフォルカンのペン先であるが、どうやら落下させたらしい。ペン先先端部がぐにゃりと曲がっている。
右側画像で青っぽくなっている部分は上に反っており、赤っぽくなっている部分は下に曲がっている。
横から見ると、その曲がり方に驚いてしまう。これぞ本物のコンコルド!先端部からフローリングの床にでも落ちたのだろうか?見事に曲がっている。
先端部の金属が薄いフォルカンだからこそこのように曲がったのかもしれない。もしこれが、重い金属軸の先端についていたとしたら、ぐにゃぐにゃに曲がっていたであろうなぁ・・・
カスタム・カエデの10号ペン先にはコストカット穴が空いていたが、743用の15号ペン先や、742用の10号ペン先にはコストカット穴が無い。
首軸内部に隠れている部分の形状を変え、穴をあける以外の金節約方法を適用したのであろう。
それにしてもフォルカンのペン先は刻印がシンプルで美しい。
刻印が多くなると剛性が強くなるので、出来るだけシンプルなペン先が好ましいとペン先を自作している人に聞いたことがある。
この曲がったところをヤットコで伸ばして曲がった部分をポケッチャーで削ってから金磨き布で磨く。
そのあとでペン先の形状を整えてどこから書いても引っ掛かりが無い様に研磨するのだが・・・
このどこから書いても引っ掛かりが無いように・・・というのが超柔のペン先では難しい。少しでも筆圧をかけるとペン先が開き、その時に内側のエッジが紙の繊維を拾ってしまう。
かといって超馬尻に研磨すると、書いているときは良いが、書き出しでインクが紙につかない。
柔らかニブの調整は、引っ掛かりと書き出し掠れとのせめぎ合いなのじゃ。ある意味、極太調整と似たところがあるがな・・・あちらは、ヌラヌラと掠れの折り合いだが。