今回の依頼品はPelikan 1931。そう拙者のハンドルネームの由来となった万年筆じゃ・・・というのはウソ。拙者のハンドルネームは勘違いから決まった。資料を調べないで決めたので、Pelikanが初めて萬年筆を作った年を1931年と間違えてつけた。
その後、1929年だったと判明したが、いまさら変えるわけにもいかない・・・という時に、そうだPelikan 1931があるではないか、それを由来ということにしよう!となったというのが真相!
ということで、それほど Pelikan 1931には思い入れがない。初めて購入した時は定価16万円の4割引で9.6万円だった。その後も1本入手しているが、それは初期のペントレで物々交換によって入手。
当時はまだ、このPelikan 1931の魅力に気付いていなかった。
ベースは1930年代のPelikan 100の派生モデルであり、大きさも機構もかなり忠実に再現されている。尻軸はエボナイトで出来ているので紫外線で変色し、それがまた良い風合いを出している。
Pelikan 1931の特徴として、キャップを締めた状態では非常にコンパクトだが、キャップを後ろに挿すと長くなる。これは尻軸の一部にしかキャップがささらないからで、後のハッパフミフミ万年筆などと同じ設計思想。
このPelikan 1931が唯一失敗したのが、首軸先端部の径が広すぎること。この径が、キャップの内径とほとんど変わらない個体が多かった。
従ってキャップを締め、キャップを緩めてから強く引っぱると、インクが水鉄砲の原理で吸い出されて、キャップ内がインクでびちょびちょになった。
これを直すには、首軸先端部を耐水ペーパーで擦って空気の通りを良くすること。ただ、こうするとせっかくの美しい造型が台無しになるので、拙者はインクを入れないで保存している。
この個体にも処置が施されているが、これは拙者がやったものじゃ。これを知らないひとの多くは、使う度に漏れるインクに四苦八苦していることだろう。
もちろん、大丈夫な個体もあるとは聞いたが、拙者が見たのは全て不具合があった。
もっとも拙者のところへ持ち込まれるのは、ほとんどが不具合が有るもの。医師が【うちに来る患者は全て病気持ちだから、日本人は全て病気持ちだ】というのと同じ判断はするつもりはない・・・
こちらは吸入機構。これは胴軸に逆ネジでねじ込まれている。従って左にまわせば外すことが出来る。ただし、ヒートガンで金属部分を暖めてからでないと外れないケースも多いので要注意。また一番上の画像にツーショットで乗っているPelikan 101N復刻は、この部分が弱い樹脂製なので、回すと内部でペキっと折れる確率が高いのでやらないようにな。
1930年代のPelikan 100と同じように、Pelikan 1931も左のように完全分解できる。この後の緑軸、青軸はセルロイドの痩せで軸がボコボコになるという不具合が出たが、この18金無垢モデルと、ロールドゴールドのモデルは軸トラブルは皆無!
やはり長期間楽しむには金属軸が最適かもしれないな。もっとも落とすとすぐに凹むので、無傷の軸でないと我慢ならない拙者のような人間には、金属軸は眺めるだけの存在でしかないが。
今回の依頼は書家の方からいただいた。筆と同じように立てて書くので、オリジナルのニブでは硬くて話にならない。そこでPelikan 100に付いていたニブと交換してほしいというもの。上が修理清掃前の状態。全体的に小さな傷だらけだし、ハート穴から先がうねっていて、先端部だけが辻褄があっている状態。
まずは、ペン先の左右のカーブを揃える必要がある。ここで活躍するのがボーグルーペとANEXの135ミリの通常ヤットコ。コレは先端部が小さくて非常に作業しやすい。
もちろん捻くりまわすので、掴んだところには小さな傷が付く。それに関しては、後で耐水ペーパーと金磨き布で擦れば綺麗に落ちる。
その状態が下側画像。良く見ると先端部のカーブもやや鋭角になっているのがわかるかな?より柔らかさを強調するために、ニブを少し薄くすると同時に、先端部を鋭角に加工した。
これでペン先が柔らかかったらいうことはなかったのだが、単に18金になっただけで、この世の物とは思えないほど硬いペン先だったのが、このシリーズがすぐに終わってしまった理由?
その反省を生かしてか、Pelikan 101N復刻版には通常より柔らかいペン先が付いている。