2012年10月01日

月曜日の調整報告 【 Pelikan M1005 18C-B 生贄 】

1こちらはPelikan M1005 Demonstrator 18C-B。金沢でまとめてお預かりした生贄の中の一本。
なんとなく使う気になれない書き味・・・ということだったので、少しいじってみることにした。
Pelikan M1000は拙者の手には合わず、数本のM1000系の限定品以外は持っていない。従って使った時間を合計しても10時間には満たないはず。
ただし、M1005のPF刻印が消えてからのニブは多少は拙者の趣味に近くなってきている。
正式にはM1005 Demonstrator用のニブにはPF刻印は無いはずだが、M1000系の限定品用のPF刻印付き銀一色ニブを移植して使っている人もいるらしい。

23ペン先の拡大画像を見ると、ペン先が少し首軸に入りすぎている。本来はこの位置が正しいのかもしれないが、太さを示す刻印全体が見える方が美しい。
またペン先先端部の右側(画像では下側)が瘤のように変形している。
プラチナ/ロジウム鍍金が施されていなければ左右対称に削ってしまうのだが、鍍金が施されているのを削ると下地の金が見えてしまい不細工。
実は、自己調整?を施した時のためらい傷のようなものがペンポイント周辺に見える。

最近発売されたPelikan M910 トレドはペン先が銀一色に鍍金されているというのが売りだが、調整を前提とするなら愚の骨頂!最近のPelikanは調整しなければならない確率が高いからなぁ。
この個体ではスリットもずいぶん詰まっているが、先端部だけは少し隙間が広い。これだけ柔らかいペン先の場合、筆記には影響はないが少し不細工。

45こちらは横顔。おやおやずいぶんとペンポイントが研がれている。自己調整かな?かなり綺麗な形状に研がれていて感心!
ただしインクフローが悪いので綺麗な形状に研いでも書き味が向上していない。また少し左右の段差があるようじゃ。
丸研ぎの形状をそのままにしてスイートスポットを削り込んだようなので、筆記時に多少字幅が暴れる。それを修正するために先端部を角研ぎにし、スリットを開いてインクフローをあげ、スイートスポットを弱める。
すなわち、もう少し筆記角度の自由度を高める調整を施してみよう。ただ、最近のPelikanの丸研ぎニブは、背開き傾向が強いので、どこまでそれを矯正出来るか・・・多少の不安を残しながらの調整じゃ。

6こちらがペン芯から外したM1005のペン先。No.149ほどではないが、首軸内に隠れた部分の長さが長い。そしてM800用ニブとは異なり、まだコストカット穴があいていない!
ペン先のハート穴よりペンポイント側がやや赤みがかっているのは、お辞儀のせい。スキャナーにかけると肉眼では気付かない微妙な曲がりが色の変化でわかる。
M1005の重量に耐えるには、少しペン先をお辞儀させていないと筆記時にスリットが開きすぎてインクが途切れるかもしれない。
筆記中にインクが引く現象が発生するとストレスは最高潮に達する!拙者が最初に購入したWaterman ル・マン100がそうだった。
O脚気味のスリットのせいだったが、2年我慢してとうとう机にペン先先端部から叩きつけてしまった。そこから自己調整の苦難の一人旅が始まったのじゃ。

7こちらはPF刻印があるころのM1000系のペン先。スリットが真ん中に来ていないのはご愛敬だが、ペン先の斜面の美しさやペンポイントの研磨の美しさは見ていて飽きない。
もしM1005のニブにプラチナ/ロジウム鍍金が施されていなければ、このような形状に研ぐ事も可能だったのになぁ・・・
ペン先を銀一色に鍍金すると確かに綺麗。でも筆記することを前提に購入し、それに調整を施す可能性があるなら、調整出来る範囲が通常ニブに比べて狭いことは覚悟しておくべき。
拙者ならプラチナ/ロジウム鍍金が施されたペン先のモデルはコレクション用とし、絶対に使わない。使うなら外周が金色のペン先のモデルを選択し調整してから使用する。 

89こちらが調整後のペン先。こちらの画像2枚は白黒画像。カラーにしなかったのはあまりに赤色が目立って見づらいから。
すなわち、かなり猫背に調整している。これは背開きの矯正のためだが、ある程度スリットを開く調整にしてあるのでインクフローは非常に良い。
従って筆圧をかけてもこれ以上スリットが開く必要はない・・・というかあまり開いて欲しくはないのじゃ。
ニブの太さを示す【B】という刻印は、その全体を見ることが出来るようになり、ペン芯もペン先の模様に合わせてやや後退させた。
結果として首軸より前に出ている長さは長くなったが、筆記感は変わらないようにした。これがお辞儀調整の効果。

10こちらは横顔。コテ気味に削られていたペンポイントを丸く研磨し、少し筆記角度に余裕を持たせた。これで机の高さ、椅子の高さが変わっても同じような書き味が維持できるはず。
字形は縦横同じ字幅だったものが、少しだけ横細縦太に変わり、メリハリのある字形となった。
キャップを後ろに挿して書いても挿さないで書いても、ペン先を紙に当てたとたん、フっと口元が少し緩むような絶妙な書き味になった。大成功じゃ!


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1h 修理調整1記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャ ナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 
Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
この記事へのコメント

M910 トレド。

格好良いんですけどねえ。

調整、できませんものねえ。

贅沢覚えてしまいましたからねえ。

後に戻れない身体になってしまいましたねえ。

(^-^;


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Posted by きゃんでぃ小海老爺です。 at 2012年10月02日 22:53