この記事を執筆した当時は、万年筆の持つ妖しい魅力よりも、しっかりとした設計のペン先の方に興味が集中していた。
従ってセレニテは一本購入しただけで満腹となりそれ以上は手を出さなかった。
その後出てきた装飾セレニテは、とんでもない値段に値上がりしたので、拙者はコレクターとしては二流。
やはり修理や調整が趣味のようだ。これを読み返して再認識した。
手首を骨折してから31日が経過したが、まだ完治には今一歩。来週の火曜日に整形外科でレントゲンを撮ってから、問題無ければリハビリに入る。
既に痛さを我慢すれば、かなり曲げられるようになっているのだが、角度によっては力が入れられないところも残っている。
スケボーの選手があちこち骨折してもすぐに直るのを見ていると、やはり体重と年齢は怪我の治りに悪影響を与えるようじゃ。
ゆっくりと治していくことにしよう。
今回の依頼品はWatermanのセレニテ。ひん曲がったような独特の形状をしている。
拙者も使ったことがあるが、反り方が拙者の好みと逆なので、非常に使いにくかった記憶がある。
かなり曲がっているように見えるが、コンバーターなどは左のとおり、真っすぐ。軸自体が大きく曲がって見えるのは、デザインがもたらす錯覚のようだ。
上記首軸ユニットを胴体に固定するには、胴軸先端の銀の装飾部分を右に回せば良い。
ペン芯を巻き込むような形状ゆえ、かなりタッチが硬そうに見えるが、意外に柔らかい。それにいわゆる巻きペンではない。
ただこの柔らかさは、弾力ではなく、素材自体の粘りのなさが醸し出すような柔らかさ。
従って筆圧をかけるとぐにゃりと曲がってしまいそうな感触が怖い・・・
実際にこのペンではペン先の片方が大きく曲がっている。
おそらくは落下したか、ぶつけたかであって、筆圧で曲げたのでは無かろうが、かなりの段差が出来ている。
ウォーターマンのペン芯では、余ったインクを保持するフィンがペン先側にあり、ペン芯側から見てもフィンは見えない事が多い。
セレニテでも一見フィンのようなものは、空気の通り道であっれ、インク溜まり用ではなさそう。
これがペン先を前から見た画像。向かって右側だけが大きく上に曲がってる。
これはスキャナーの上にノックアウトブロックを置き、その穴の中にペンを立ててスキャンした。
すなわち、ペンポイントがスキャナーのガラスに密着している状態。
CCD型のスキャナーは被写界深度が深いのでこういう芸当が出来る。
修理の記録を残すにはピッタリの方法なのでおためしあれ。ただしガラスに傷が付きやすいのでご注意を!
こちらが段差が解消された状態。この状態に調整するのにかかった時間は約5秒。
反り上がった方を左手親指の爪で【ムギュー】と押すだけ。
素材が柔らかいペン先は多少力を入れるだけで、すぐに曲がってくれるので修理は簡単。
しかし筆圧で曲がってしまう可能性も高いので要注意じゃ。
こうやって段差調整が出来てから依頼者の筆記角度に合わせた微調整をやることになる。
調整の終わったペン先を見ると、先端部分が多少上に反っているように見える。
しかしペン先とペン芯との間に隙間は無いので、こういう設計と考えるべきかもしれない。
ほとんど弾力が無い変わりにタッチが柔らかいのは、実はこの反ったペン先のおかげかもしれない。
そう、Sheafferのタルガと似た設計思想なのかも・・・