2024年08月21日

〔 【 Stipula ピノキオ 赤軸 18K-M インク切れ解消 】 〕アーカイブ

下の記事は2007年のもの。〔このエボナイトの変色というのは、なかなか良い〕と書かれている。

今ではエボナイトの曇りは許せない。ただ、臭いは好きだ。問題は曇りと匂いは同期すること。

曇らないエボナイトは匂わない。匂うエボナイトは曇る。悩ましいなぁ・・・

こういう刻印の多いペン先は硬くなるというのがイヤで、WAGNER 限定品の刻印をレーザーに変えた最初が〔
左馬〕でPilot製。

翌年、製造先をプラチナに変える時、本当にレーザー刻印でいいの?と何度も確認された。

レーザー刻印はプレピーなどの安い万年筆のペン先に施すものとの認識が業界にはあったようだ。

現在では小ロットの限定品ではレーザー刻印の方が多くなっている。依頼者はきっとその方が安いのと、複雑な模様が出来るから選んでいるのだろう。

しかし萬年筆研究会【WAGNER】だけは、ペン先の弾力が(さらに)硬くなるのを防ぐという目的のためにレーザー刻印を選択している。

もっと正確にいえば

金ペン先の場合は、複雑な模様が欲しいのと、硬くしたくないため

スチール製ペン先の場合は、複雑な模様が欲しいのと、安く提供して欲しいから

じゃな。

スチール製ペン先で打刻刻印を使ったら、きっと金に打刻するよりも(加工費は)高価になるだろう。

スチール製ペン先を1000万枚くらい作るなら、打刻刻印は試してみたいとは思う。金型倒産はしたくないでな・・・





2007-11-07 01これはスティピュラのピノキオ。前回紹介したのと同じ持ち主であるが、仕様はかなり異なっている。

依頼内容は【持久力の向上】。書き続けていると途中でインクが切れてしまう現象が頻発するとの事じゃ。

これは初期のスティピュラのペン芯によく発生した問題点だが、インクフローの良いデルタのペン芯と交換したら解決した。

要するにインクフローを改善すれば、この現象が発生する確率は下げられるということじゃろう。


2007-11-07 02左の画像のように、キャップの中は鮮やかなエボナイト製だが、キャップの外は曇っている。

直射日光に長時間さらされたか、蛍光灯の下で紫外線に毎日さらされていたか・・・いすれにせよ、このエボナイトの変色というのは、なかなか良い。

昔は大嫌いで、すぐに磨きに出していたが、最近では曇り度合いが好きで、わざと熱湯に入れて曇らせたりしている。


2007-11-07 03先日のピノキオは14金ペン先だったが、エボナイト製ピノキオには18金ペン先が付いている。限定品だったかな?

ペン先のスリットはガチガチに詰まっている。ただスティピュラのペン先は素材が柔いので指先でグっと力をかければすぐにスリットが開くので調整
はしやすい。

反面、筆圧の強い人に貸すと一瞬で調整が狂ってしまう。極論すれば【イタリアメーカーの萬年筆を貸す=調整が狂う】ということじゃ。


2007-11-07 04横から見ると、ペン先とペン芯が離れている。これではあるタイミングでインク切れが起こっても不思議はない。

おそらくは以前使っていた人の筆圧が高かったのであろう。依頼主の筆圧は普通だから・・・

ペン先はMだが、横から見た姿は美しい。多少研げば非常に美しいスタブの書き味が堪能できよう! 

残念ながら依頼者は縦横同じ線幅の萬年筆が好きなので、【Stub】ではなく【太めのM】に研いでおいた。



2007-11-07 05これは吸入機構にも凝っている。回転吸入式で尻軸を回せばインク吸入が出来るのだが、胴軸の中央を回すと、中に大きなコンバーターが内蔵されている。

この大型コンバーターの取手部分が尻軸部分とかみあって回転吸入のように使えるのじゃ。

実はこの大型コンバーター方式はスティピュラの回転吸入式のほぼ全てに使われている。ノベセントエトルリアもこの方式だった・・・


2007-11-07 06スティピュラのペン芯は、画像の向かって左端が細くなっている。

一方、MontblancやPelikanの回転吸入式用のペン芯にはこの管のような部分がない。

スティピュラ製萬年筆についているペン芯はカートリッジやコンバーターでも使えるように、必ず細い管の部分がある。

こういうペン芯は一般的に、回転吸入式専用のペン芯よりもインクフローが悪いような気がする。

ちなみにアウロラのペン芯も回転吸入式用とコンバーター式では同じ物を使っている。

MontblancのNo.146とNo.147ではどうなのかな? No.147用のペン芯には管がついているのかな?あるいは、別の方法でやっているのかな? 気になるなぁ・・・


2007-11-07 07こちらがスリットを若干開いた状態。さらにスタブ状の書き味を多少通常のMに近い状態に研ぎ上げた。

そしてペン芯はインク誘導液につけてインクの流れを良くした。

このインク誘導液をインクに混ぜようとする人【画伯】もいるが、この液はインク自体に効果があるのではなく、プラスティックとインクのなじみを良くするだけじゃ。

混ぜると滲みが大きくなるので、【よゐこ】は真似しないように・・・


2007-11-07 08こちらが首軸に取り付けた状態。ちゃんとスリットが開いているのが確認できよう。それにしても刻印が多いペン先じゃな。

ペン先の刻印は少ないほど良いといわれている。刻印を打った所に力が加わり、弾力が無くなったり、もろくなって割れやすくなるらしい。

これ金属工学科出身で自らも金ペンを作っていた人からの受け売りじゃ。スティピュラにもシンプルな刻印の限定品がある。恐ろしく書き味が良い。

弾力もすごいし・・・刻印がシンプルな方が良いのなら、作り手側の自己主張としての刻印は不要じゃ。

偽造防止とか、年代特定用なら歓迎。小さな小さな刻印でお願いしたい・・・


2007-11-07 09これが横顔。ペン先とペン芯とのあいだのスリットは無くなっている。

もしエボナイト製ペン芯であれば、ペン芯側を曲げるのだが、プラスティック製ペン芯の場合は・・・

元に戻ってしまう確率が高いので、ペン先側をほんの少しお辞儀させた。

このお辞儀によって、ペン先を上に反らせるには相当の力がいるようになる。

すなわち、多少の筆圧をかけてもペン先とペン芯が離れるようなことはない。ただし、若干書き味が硬くなる。

幸いなことに依頼者は刻むようにしかりとした文字を書く。

従って、むやみに柔らかいペン先よりも多少弾力が少ないモデルを好んで使っている。おそらく【お辞儀】は書き味向上に繋がったであろう。

それにしてもエボナイト製のピノキオは良い! 久しぶりに収集目標が出来た感じじゃ!
 

Posted by pelikan_1931 at 23:59│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック