初日は13:00〜18:00 2日目は10:00-17:00で開催され、拙者は対面調整付き1,000円〜1,500円万年筆の調整を行った。
調整本数は初日が約80本、2日目が約120本。調整時間は初日が正味4.5時間、2日目が正味5時間！
初日は最後の方は会場内の人数が少なくなっていたのでさほど疲れなかったのだが・・・
2日目は15:30の時点で万年筆を数本ずつ手に持たれて行列されている方が5〜6人いらっしゃったので、売り物の万年筆を全て机上から降ろして終売とした。
時間内に調整完了出来る本数はこれくらいと判断したから。終わった時は・・・ヘトヘト。
22日は睡眠時間2時間で会場入り、23日は仮眠4時間で開場入りしたので、エネルギーが尽きてしもうた。ま、爺だから仕方ないがな。
全盛期のセーラーの川口先生は、鹿児島のデパートで1日に200人をお相手されたと噂で聞いた。
1日の調整時間はお昼休みを除いて最長でも7時間でしょう。
420分間に200本といえば、1本に2分間。1時間に30本・・・信じられないキツさだったはずだ。
拙者の初日が270分で80本・・・1本3分強！
2日目が300分で120本・・・・・1本2.5分！
2日目はペットボトルが上から5�冂�度しか減っていなかった。それくらい忙しい。300分で根を上げた！
川口先生は、それより速いペースで420分間調整を実施、それも通常は翌日も同じくらいの本数をこなされた。
川口先生の調整本数のピークは60歳くらいだったと想定されるので、現在の拙者よりも12歳若いのは事実だが、それにしても凄い量！
単位時間あたりの調整本数が多い上に、調整時間が長いので、メチャクチャきつかったはずだが、それを耐えられた理由はただ一つ、依頼人からの感謝の言葉と笑顔。
それにしても、今回の拙者の調整は（基本的には）まったく同じ万年筆の同じペン先を持つ”新品”を調整する単純作業だった。
川口先生の時代には、持ち込まれる万年筆はメーカーも状態（30年間使ってないなど）も千差万別。本当に大変だったことは想像に難くない。
萬年筆研究会【WAGNER】でのペンクリでは、お一人の調整が終わった後、四方山話などしながらの啓蒙活動が出来るのだが、今回のスピードではどうかというと・・・
啓蒙活動や四方山話などは手を動かしながら、おしゃべりし、研摩調整が終了すると万年筆を洗浄して手渡し、（左利き/ぬらぬら好みの方を除き）試し書きなしで・・・
〔お待たせしました。はい、次の方〕とお呼びする感じ。
最初に万年筆を握って紙の上にペン先を落とす0.1秒前に〔はい。OKです〕といって研摩調整を始める。
ペンを握る指の位置とペンの角度を見れば、万年筆に慣れているかどうか、筆圧の高低は、ほぼ見当が付く。
左利きの人の場合は手首の曲げ方で3種類の癖があり、書き進める際の角度の変化も見ないと調整は出来ないので、少し癖把握の時間がかかる。
筆圧が低い方の場合は、書き出し掠れのリスクが高くなるので、最期にペンポイントのスイートスポット仕上げを慎重に行う。
また拙者の場合、啓蒙活動が主目的なので、キャップを挿す際の位置（ペン先の延長上に挿せ）とか、握る位置とかのアドバイスは、研ぎながらやる。
と考えると、調整時間の半分弱はしゃべりまくっているわけだ。どうやら何故調整師が雄弁なのかが少しずつ体験としてわかってきた。
間が持たないからしゃべっているわけではない。相手に上手に万年筆を使って欲しいからこそ、みなさん雄弁なのだ。
おそらくはみなさん、意識はされていないのだろうが、根底にはそういう潜在意識があったのだとわかっただけでも、今回の2.5分/本のスピード調整はいい経験だった。
このスピードを上げようとか、全体に調整時間を延ばそうという意志は全くない。
ちゃんと試し書きしていただきたいので、本来は1本あたり4分、1時間に15本、連続調整時間5時間で、1日当たり75本程度が最適なのではないかなぁ〜？
この75本/日のペースは過去に数回あった。T&Lさん主催の宇宙遊泳＠静岡が毎回このくらいのペースで、調整側も依頼側もcomfortable。
今回の高速調整で依頼者にお伝えしたことを、実は30年以上前に金ペン堂の親父さんから聞いていたことを思いだした。懐かしい。
”1万円の万年筆と10万円の万年筆の調整とでは、かかる時間は全く違う” という言葉は重い。現在の拙者は大賛成だが、当時は ”ふかしてるなぁ〜” と信用していなかった。
拙者の場合は、見立ては1,000円万年筆ならば0.5秒（握ってから紙に手を下ろす0.1秒前までの間）。
一方の10万円万年筆であれば、持ち込まれた万年筆でA4紙の全面9箇所で名前など書いていただいて、位置ごとの筆記角度の変化を見る（1回目）。
次に拙者の万年筆数本で同じようにA4紙の９箇所に名前を書いていただく。これはインクフローの違いによって、筆圧や筆記角度が変化するかどうかを判断するため。
上記を総合判断して、筆記角度変化が多い人には、その変化を少なくするような調整方針を描く。（変化させると書き味が落ちるように研ぐ！）
研いで試筆、微調整して試筆を繰り返し、最期に種明かしする（ま、洗脳のようなもの）。
この場合は、１本あたり、早くて30分、平均60分、最長90分程度かかった。
30年前に金ペン堂さんがおっしゃった内容は、少しニュアンスは違う。彼の場合は販売前の万年筆の調整について語られた。
試筆用の万年筆にはxx工程の調整を施している。
販売用の万年筆にはそれよりyy工程多い調整を追加しているので、書き味は販売用の方が良いので試筆する必要は無い。
このMontblacの金無垢モデルにはさらにbb工程多い調整を施しているので書き味は夢のようなのだ。
これが成立した理由は、金ペン堂さんは万年筆を購入する方に、筆記角度、捻り方、キャップを後ろに挿す位置などを細かく教授される。
実は販売用の万年筆は、何タイプかの筆記癖にあわせてあらかじめ調整し、ひとまとめにして展示されていたそうだ。
そして試筆されている間に書き癖を見抜き、〔あんたにはコレ！〕と買うべき万年筆を提示して下さる。
それからキャップの挿し方とか、メンテのやり方、使うべきインクの銘柄や色までのアドバイスを受けた記憶がある。
この上から目線方式の販売方法は、迷える万年筆愛好家から絶大なる支持を得たのは間違いない。皆さん嬉々として怒らに？通っていた。
拙者の調整スタイルは本質的には金ペン堂先代流。いいから拙者の言うとおりに書いてみなさいよ・・・と指示し、そう書かないと書き味が悪くなるような罠を仕掛ける？
フルハルターでは、依頼者が書き味の要望を出した際、（やるべきじゃない）、（出来るけどやんねぇよ）、（やりましょう）とはっきりと依頼者に伝えてくれる。
常におっしゃる内容にブレが無いので、後々オークションに（フルハルター調整済み）として出品されても本当かどうかは見る人が見ればすぐにわかる。
Lichtope（たこ娘さん）の調整スタイルは、実はフルハルター型だと考えている。やる必要の無い研摩は（絶対に）されないが、その理由は明確に教えてくれる。
これにに近いのが〔出来るけどのう、あんまりお奨めせんのう。理由はな・・・〕と説明してくれるあの方。
そういえば昔の萬年筆研究会【WAGNER】で主流だったのはMI（Misshion Impossible）方式と呼べるだろう。
出来るかどうかわからないが、生贄としてお預かりします。ただし生贄が具合悪くなり、あるいは壊れても当局は一切関知しないからそのつもりで！
拙者は修理に関しては完全に生贄方式。なんせ生贄方式命名は拙者だからな。成功確率は悪く見ても95%は超えているだろうが、もちろんMission 失敗もあった。
そのほか、ゴルゴ13方式もあるかも？こちらが約束を守っていれば、かならず良い書き味に導いてくれるが、（途中で他の人の調整に出すなど）の裏切り行為がが発覚すれば・・・
始末される＝出禁 なんとなく、ホワイトスターの会社のサポート体制に似てるかも？
本日は戯れ言でした。
2024年09月23日
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