胴軸が金属製にもかかわらず首軸が樹脂製ということ。すなわちインクを補充して胴軸に首軸をねじ込む度に、少しずつ首軸側が削られていく。
首軸側の樹脂にネジが切られていくのだ。そのうち、首軸が胴軸内に入っていき、キャップがパチンと締まらなくなる。
もう一点は、インクで首軸の樹脂が犯され収縮してしまうこと。Parker 45ほどではないが、Parker 75でも収縮した首軸をよくみかけた。
ひょっとするとそのインクによる収縮を回避するためにペンマンインクを開発したのかもしれない。
たしかにペンマンインクを入れている限りはParker 75の首軸の収縮はなかったが、他社製万年筆には甚大な被害を及ぼした。
★Montblancの限定品を1ヶ月ペンマンインクに浸けておくとぐにゃぐにゃになった。
★Auroraの吸入式に入れると、インク窓のところが変色し、しまいにはパカっと割れた。
★インクを入れたまま1ヶ月放置したら、ペンポイントのところにカビのような大きな固まりが出来た。
等、不具合だらけ。pHは中性を示していたが、色素を溶かす溶剤に問題があったようだ。
おかげでペンマンインクは市場から姿を消し、ソウルペンショーでGreenを入手した時にはオークションで60,000₩だった。
どんなにインクの色が増えても、ペンマンインクの紅と緑と茶色以上に魅力的な色には出会えない。そう、毒婦のように魅力的だった。

今回はParker 75のわりと古いモデル。フラットトップだが、首軸の痩せが非常に少ない。
Parker 75の弱点は首軸の樹脂が痩せてしまうこと。
軸は純銀で丈夫、ペン先もユニット式で丈夫な上に、ニブ単体でも大量に販売されたので、中古市場にいくらでもある。ところが完全な首軸が無い。
オークションでは程度の良い首軸ユニットは、程度の良くない首軸がついた純銀のParker 75全体よりも高くなることもしばしばあるほど。
程度の良い首軸はもはや宝じゃ。インクを入れて使わなければ劣化して痩せる事は無いようなので、コレクションにするなら絶対にインクを入れない事じゃな。

これくらい細ければ引っかからない方がおかしい。いわゆる無理難題というやつじゃ。しかもこいつは、XFの中でも特に細いのではないかな?

これだけガッチリとペン芯ユニットの食い込んでいると抜くのは困難じゃ。
適当な調整して【ダメ出し】を何度もくらうくらいなら、もっと程度の良いXFと交換してしまおう。
女王が重視するのは、書き味であって、萬年筆の各部品の時代の整合性ではないからな。

この中では左から二番目が比較的ペンポイントが大きそう!これと取り替えしまおう・・・!

ペン芯の構造はまったく同じだが、ペン先の形状は大きく異なっている。
オリジナルのニブはペンポイント周辺からさらに角度を付けて削っているように見える。それに対して代替用はペンポイントまでストレートな斜面となっている。

代替品の方には直接【XF】とアルファベットで刻印してある。昔はペン先のバリエーションが非常に多かったので番号でないと表現できなかったのであろうな。
では・・・ということで、一番ペンポイントが大きなペン先を取り出してルーペで眺めてみたのじゃが・・・とうてい【女王】を満足させられる研ぎ上げる自信がない・・・

【XF】や【63】とは比べものにならないほど大きなペンポイントがついている。
プリミアはParker 75の高級版として出したので、あまり冒険をしなかった。ただ、高級な材質を使った割には首軸が安っぽかった。
Parker 75の弱点を解消する為に、首軸の素材を変えたのだろうが、これが敗因。Parker 75ならパチン!と閉まるキャップが、プスン・・という気持ち悪い感触で閉まる。
これでは熱狂的なParker 75ファンの心はつなぎ止められない。あわててDuofoldの復刻版を市場に投入したというわけじゃ。
プリミアですばらしいのはペン先。14金ペン先と18金ペン先を比べると、通常は14金ペン先の方が良いものだが、プリミア(18K)に限ってはParker 75(14K)より良いペン先!
Parker 75のグリグリというような書き味は解消されて、フェザータッチに近づいている。

Parker 75の首軸は微妙な個体差があり、予備のペン先ユニットを差し込んでも、ユルユルで使えないこともあるが、今回は見事に決まった!

気をつけるべきは【女王】は書き味確認の時に、【文章を書く時には絶対に傾けない角度にペン先を傾けての書き味チェックが大好き】ということじゃ。
従って、書き味が固まってきた人の調整では満足できなくなっている。そこで調整したかどうかわからない調整にした。
スリットが開いている事に気づかなければ調整していないと思うかも知れない。いや、きっとそう思うはず。それでいて【なかなか良いじゃない】と言わせる調整にした。
ただし、そこは【ダメ出しの女王】のこと、そう簡単には満足しない。そういう時には対抗策として、自分で調整してもらう事にしている。
拙者の目の前で【女王】が四苦八苦しているうちに拙者は【王子】とランチに行って、帰ってみたらペンポイントは危機一髪!という状態が再現するかも知れない。
今からワクワクじゃ!