調整師には【フローのコレクター】が少なくないように思う。
どんな書き味なのか知りたいが、入手するとすぐに手を入れてしまう。そして書き味が良くなると興味が無くなる。
これの繰り返しで今日まで来たのが拙者・・・かな?
拙者は音楽にはまったく興味が無い。な〜んにも習ったことはないし、オタマジャクシも中学を卒業して以来書いたことはない。
が、ミュージックニブは大好きだ。これは拙者が字が下手な事と関係している。
まだ30台前半のころ、1年間の研究活動に参加していた。その会合は月に2回開催され、その度に一番の若手だった政府の若手官僚が議事録をとっていた。
彼が使っていたのがプラチナのミュージックニブ付の万年筆。いつも非常に読みやすくて重宝した。あるとき彼に、何故ミュージックニブを使うのか聞いてみた。
『下手な字が綺麗に見えるんです』と恥ずかしそうに彼は答えた。これしかない!と思ったね拙者も。
それからスタブやミュージックのニブは見かける度に購入したし、調整を始めてからもしばらくはスタブを目標に訓練した。
しかしすぐに議事録なんぞはワープロ、配布は電子メールの世界になり、拙者の集めたミュージックやスタブのニブも散逸した。
残ったのはPilotの5号のSUニブだけ。ところが、この742のミュージックニブを見てから、また火が付いた。
各メーカーのミュージックニブをオークションや館で購入して回った。ほぼ全ての国産メーカーのミュージックとスタブは過去にさかのぼって集めたと思う。
問題は何に使うかだ。よく考えてみると用途を思いつかない。議事録は書かないし、宛名はクロスポイントを使う。
手紙はサイン以外は全てPC利用。拙者が万年筆を使うのは、主として調整済の万年筆が日々どのように変化するかを確かめる【調整もどり試験】の為だ。
現在は拙者のニブコレクションの一環として未調整のままペンケースの中に納められている。
万年筆コレクターには【フローのコレクター】と【ストックのコレクター】がいる。後者は入手した物を手放さないタイプ。
クラシックカメラコレクターのように、機構や歴史背景とともに保存している。こういう人がいないと、歴史は保存されない。
前者は一度手に取って楽しめば、あとは人に譲るというタイプ。使った経験を重視するタイプ。
拙者はミュージックニブに対してはストックのコレクターであり、そのほか(特にVintage)に関してはフローのコレクターじゃ。
数が少ないVintageを拙者のような字を書かない者がストックしてしまうと申し訳ないでの。