当時は、よりユーザ寄りで、書きやすければどんなにペンを改造しても問題なし・・・という感覚だった。
今は、出来るだけオリジナルの形状を残したままで、書き味を良くする方にシフトした。
書き手側から万年筆側に若干寄った感じかな？ただ、いくらでも手に入るような万年筆の場合はなんでもやる。
稀少な万年筆は、可能な限りオリジナルに近い状態で次世代に引き継ぐ・・・という感じかな？
まぁ、次世代の人材の方が改造に積極的なのは、時代が変わっても変わらないようだがな。
エイトロックの話題が出ていたので、過去記事を検索してみたが、以下の話題は出ていなかったので披露しよう。
実は、1986年当時、六本木のつるとんたん（饂飩屋）が出来る前のビルの地下で、月に一回、第一木曜日の夜にプロレスクイズのイベントがあった。
拙者もプロレス知識には自信があったので、一度見学に行ってみたのだが、びっくり仰天！
10人くらいが参加したクイズで、質問は超マニアック。
例：馬場とブルーノサンマルチノが最初に日本の会場で引き分けたのは、何年何月何日のどの会場で、試合時間は何分何秒だったでしょう？
こういう問題に1問でも間違うと脱落！これが延々と続き、勝負がついたのは36問目。
そもそも10問目くらいまでで脱落したのは、2人のみというハイレベルな戦い。
拙者は一問たりともわからなかった。
万年筆界にたとえて言えば、ギュンター・ワグナーの結婚相手の名前は何でしょう？
てなレベルの知識。実は、プロレス雑誌の各頁の横の方に縦書きで小さな文字でマニアック情報が書かれていた。
それを全部覚えていれば、なんとか8割は答えられるレベル。
それ以上に行くには、プロレスに関する記事を毎日ノートに書き写して何度も何度も楽しむくらいでないとだめらしい。
驚愕して、これは拙者の出る幕は無いなと退散。
ルービックキューブ、スペースインベーダー、ヘッドオンなら六本木で無敵だったが、プロレスでは太刀打ちできなかった。
やはり上には上がいると思い知らされた事件だった。
ひさしぶりにNo.149が生贄じゃ。1970年代のNo.149と思われる。ここから1980年代前半のモデルへ繋がる首軸先端の細工が大好きじゃ。全体的なプロポーションも良いし、なで型のクリップも実によい。
気を抜くとインク漏れしてしまうという大きな欠点も、萬年筆はコレクションと割り切っている拙者には何の問題もない。
もし拙者が筆記用にNo.149を買うとすれば現行品を選ぶ。それをらすとるむさんにお願いして【らすとフォルカン】にしてもらって使うだろう。ペンポイントはM。
依頼内容は【書き味を上品に】というだけ。まずは書き味以前にペン芯とペン先が左右方向にズレている。左画像のように、ペン先を真上から見た際、ペン芯が左側から覗いている。これは拙者が最も嫌う状態。
この場合はペン先とペン芯を首軸から外して位置調整が必要となる。ただ、これは【上品でない書き味】とは関係がない。
裏側から見ると、それほどペン芯が左（画像では下方向）にズレているわけではない。ほんの少しのズレではあるが、ペン芯が前に出すぎているために、目立って見えただけじゃな。
こんなにペン芯が前に出ているNo.149は初めて見た。それにしても上下スリットの無いペン芯は美しい。まるで芸術品じゃ。
いくらペン先の開き調整の時間削減になるとはいえ、ペン芯の上下の間にスリットを入れるのは邪道かも・・・・と思えてきた。
横顔はこちら。これではペン先を極端に寝かせて書くmochidukiくんや八雲くんの場合、ペン芯の腹の出っぱりがじゃまして、ペンポイントが紙に当たらないかも？そしてペン先まわりを眺めて【書き味の下品さ】の原因がわかった。ペン芯が前すぎてペン先のお辞儀が出来なくなっている。
これでは平坦な書き味で深みが出ない。またペンポイントのおいしいところではなく、調整がうまく出来ていない部分が紙に当たるようになっている。
調整には、インクフローの向上、ペン先の多少のお辞儀、ペンポイントのスイートスポットの変更が必要じゃ。
ペン先のスリットは例によって詰まっている。それにしても使われていないペンポイント！未使用といって良い。こういう物はすぐに調整が終わってしまうので、なかなか楽しめない。
【４の字固め】のように曲がったペン先にも出会ってみたいものじゃ。見たとたんタップするかもしれないが・・・
ちなみにジョニーパワーズの【４の字固め】は【エイトロック】と呼ばれていた。当人曰く【２倍効く】ということらしい。
技をかける体勢も裏表逆だった。高校生の時、プロレス専門誌で【エイトロック】を誤って【８の字固め】と訳していた。
どんな形に固めるのかと、友人と研究していたので、本物をTVで見た際には目が点になった。
MというよりFに近い形状なのでスリットは左図程度にしておいた。これ以上拡げると書き味の下品さが助長されてしまう。先端部の開きはホンの少しで十分。
そして後述するように、首軸に突っ込まれた状態でどうなるかも考えてスリット巾を微調整。
次にペン先の裏側をツボ押し棒でしごいて、すこしずつ猫背に形状変化させるのじゃ。
こちらが調整の終了したペン先を首軸に入れた状態。気をつけなければいけないのは、スリットは首軸に突っ込むと、多少狭まってくる事。
ペン芯に乗せたニブをグっと突っ込むので、ペン先のカーブは強制的にペン芯と密着させられ、ペン芯のカーブにあわされてしまう。
もしペン先だけの状態のカーブの曲率がペン芯よりも大きければ、首軸に突っ込んだ段階でスリットは狭められてしまう。
それを見越してスリットを拡げておかなければならない。
というか、首軸に押し込んだ状態で最適のスリット巾になるように、ペン先だけの段階で多少スリットを広めにしておくのじゃ。
こちらが首軸にセットした状態での先端部の拡大図。太字や極太と違い、FやMではスリット巾がインクフローや字巾に大きな影響を与えてしまう。
スリット巾に関しては、ペン先を首軸にセットしたあとでも微調整出来るので、ぜひ覚えていただき無い。
【ペン！ペン！ぺん！ファウンテンペン！】の245頁【原因��】にやり方が書かれているので参考にされたし。
そしてこちらが、もっとも重要な横顔。ペン芯は後退し、ペン先は多少お辞儀し、ペンポイントは筆記角度に合わせて研いである。書いてみるとガサツだった書き味が一変している。これには拙者も驚いた。ほんの少しの形状変化がここまで書き味を変えてしまうとは！
まだまだ最終の書き味を予測した上で調整しているのではなく、微調整を積み重ねて味を出しているに過ぎないな・・・達人への道は遠い！
