今までに何本も新品未使用で入手し、そのままお嫁にもいっぱい出したが、なんと今までにインクを入れて使ったことは一度もない!
あまりに好きすぎて勿体なくて使えていない。そして、この#760以降、入手してもインクを入れないで保存することを始めた。
調整すればどんな万年筆でも好みの書き味に出来るので、形状だけ楽しもうという境地に達していた。
いわゆる〔万年筆の高みに堕ちる〕状態にいたわけだ。
そう〔万年筆の高み〕では、万年筆を使うことは条件にはならないのだが、〔ガラスペンの高み〕ではどうなのだろう?
拙者の見立てでは、〔ピアスと同じ感覚でガラスペンを買う〕状態にいると考えている。
ピアスなんて何個あってもまた欲しくなるものだろう。そして購入したからにはとっかえひっかえ使うものだ。
高価な物であって皇室女性のティアラのように1年に一回くらいはハレの日に使いたくなるはずだ。
ただ、〔万年筆の高み〕にいる万年筆にはインクを入れたくないと考えてしまう。
万年筆は一度でもインクを入れると新品ではなくなる。ガラスペンはインクを洗い流せばいつでも新品と同じ・・・
違いはこのあたりかな?知らんけど・・・
今回紹介するのは1988年にPelikan創立150周年を記念して発売された#760。バーメイルではなく金張軸じゃ。
#750は銀張軸。当時は、なぜ純銀やバーメイルにしないのかと不思議に思った。
非常な割高感があり、絶対に買うもんか!と思ったものじゃ。金張、銀張と金鍍金、銀鍍金を混同していたからだろう。
なを最近ではM760と表記して販売しているケースもあるが、少なくとも発売当初は#760という名称だった。
拙者が初めて購入したPelikanは、当時の#600。この#760と同じ18Cの金一色ニブが付いていた。そのEFを購入した。
まだ調整のまねごとを始めたばかり。やりたくて調整していたわけではなく、書き味の悪さに辟易して、やむなく調整をせざるを得なかった・・・という時代。
#600についていたEFニブにも閉口した。極細で、柔らかくて、ひっかかるニブが、いかに悲惨なものかは経験者ならわかる。最悪!
一ヶ月ほどは我慢して使ったが、とうとう我慢しきれなくなって、3000番のペーパーでゴシゴシ!半日でペンポイントは無くなった!
それでこの18Cの金一色ニブに愛想を尽かしてしまっていた。当時、BやBBを体験していればなぁ・・・こちらがペン先の拡大図。金一色のペン先はボディとマッチしていて非常に良い。
この後、ペン先がバイカラーになってしまうのだが、そうなると金一色のボディにバイカラーニブになってしまう。拙者が最も嫌うパターンじゃ。
#750には当初から18Cのバイカラーニブがついている。こちらは非常に良い感じ。ボディは銀張だが、クリップは金色なので、バイカラーニブでも違和感はない。
当時から見映え重視だったので、1991年にメディチが出たとき、ボディの質感には非常に惹かれたが、ペン先がバイカラーだったのがどうしても許せなくて・・・
5本予約していたが、本物を見て、その場で解約した。今でもその結論は正しかったと思う。もし、渋々購入しても、すぐに人にプレゼントし、10年後に後悔しただろうから・・・拙者が#760を入手したのは、1990年代の後半。既にペン先はバイカラーのガチガチに硬いニブになっていたが・・・
マレーシアの販売店が金一色の18C-BBや18C-Bニブを数本ずつ持っている事がわかったので、全部いただいて、トレドや#760や#600に取り付けている。
何人かにはペン先だけがお嫁に行った。
このBBのペン先をよく見ると、右オブリークのように多少右側が寝ている。このあたり当時のペン先に対する検品のおおらかさが出ていておもしろい。
修理用部品としてのニブなので、それほど厳しいチェックがなかったのであろう。
このニブを実際に研いで使うに当たっては、約10秒ほど左側の山を削れば完璧な形状になる。ペン芯はやや前に出ているようだが、スリットは問題無し! おもしろい事実に気付いたので報告しておこう。左は1988年の輸入筆記具カタログじゃ。
このカタログは1987年末に作成されるので、1988年発売の#760は掲載されていない。18Cペン先付きの#600が35,000円で掲載されている。
拙者が購入した#600もその値段だった。ただしアメ横で購入したので21,000円だったが。そしてこちらは、1989年のカタログ。なんとペン先が14金バイカラーになって値段が5,000円下がっている。
当時はこちらのニブの方が書き味は好ましく思えたし、萬年筆店の人は・・・
【18Cのペン先は柔らかすぎて曲げる人が多く、苦情が殺到したので、急遽14Cの硬いペン先に変えた】と説明してくれた。
当時はその言葉を、そのままに信じていたのだが、本日カタログを見ていて疑惑がわいた・・・おかしい、何かおかしい!大きな矛盾を感じる。
【苦情が殺到したから変えたぁ?嘘こくなぁ!】
何故、苦情が殺到した酷いニブを、Pelikan 創立150周年記念の#760に取り付けたんだ!
トレドには元々18Cの金一色ニブがついていたので、【在庫品です・・・】と言い逃れ出来るかも知れない。
しかし創立記念の誇らしき品に苦情が殺到したニブを使いますか?
正直に言って欲しかった・・・【#760に装着するので、#600用のペン先を回し、#600は14Cに変えました。でも値段下げたので許してください】というのが本音ではなかったのかな?
消費税は1989年の4月1日から。従って1989年の輸入筆記具カタログの段階では、物品税表示。#760が70,000円で、#750が60,000円。
それが翌年の輸入筆記具カタログになると60,000円と52,000円に安くなっている。物品税率は15%だったので妥当なところ。
金無垢よりも、純銀よりも、バーメイルよりも金張軸の色合いが好きな拙者のお気に入りは、この#760と520NN。いずれもPelikan製じゃ。
きっともったいなくて一生インクを入れることはないだろう。いや、一本はインクを入れて使ってみるかもしれないな。